2026年5月12日、WSET Diplomaを合格するための最後の関門であったWSET Diploma D3(Wines of the World / 世界のワイン)のセオリー試験を受けてきました。
WSET Diplomaの全ユニットの中で50%という圧倒的な配点ウェイトを占める最難関、それが「D3(Wines of the World)」ですが、既に前年の10月には、テイスティング試験はパスしていたので、このセオリー試験が最後の勝負でした。
本記事では、試験当日、合格者がどんなことを考えて試験問題に向き合っていたのか、どういった内容を書こうとしていたのかについて、当時の記憶を詳細に掘り起こしたうえで、レポとしてまとめるものです。ぜひ、これからWSETやワインの試験の受けようとする方の参考となれば幸いです!
試験当日のタイムラインと現場のリアル
ここでは、当日のスケジュールとその前後でどういったことを準備していたかまとめます。
当日のスケジュールとメンタルコントロール
試験当日のスケジュールは以下のとおりです。私は、いつもの通り?、試験前は、キャプラン(外苑前駅)の近くのカフェで、最後の復習をしながら、その時を待っていました。だいたいカフェには、8時前くらいから勉強していたので3時間弱は、最後の追い込みをしていました。
最後の追い込みでは、特別な勉強をすると言うよりは、固有名詞の綴り(例えば、プリオラートのリコレッリャなど)や、産地の区分(例えば、ペネデスの3区分など)を見ずに書けるか?など、簡単な再確認を全体通してやるくらいで抑えました。
10:30-10:50 入室/準備
10:50-11:00 試験前準備
11:00-13:00 Paper 1 試験
13:00-14:00 お昼休憩
14:00-15:20 Paper 2 試験
早めに入室するかどうかは、人の好みがあるので、これまでの人生での受験の体験を参考にすると良いと思います。私は、前に人がいたりすると気が散るのと、隣に人がいるのも嫌なので、端の最前列を取るようにしていました。
あと、カフェに行ってアイスコーヒーを飲んでしまってはいますので、利尿作用でトイレに行きたくならないよう、水分摂取は最低限にして、直前に一回トイレに行くことは心がけていました。
あと、私のリラックス手段なのですが、緊張で手に汗をかいているのが嫌なので、必ず直前に一回石鹸で手を洗うとううことをしています。
ぜひここは皆さんにとって一番のリラックス手段を取ってください!
3時間20分を戦い抜く時間配分
D3 Theoryは時間との戦いです。試験開始の合図とともに、まずは全体の問題を一通り眺め、配点比率を確認しました。
配分の仕方は、1問40分ですので、その40分をWeight分で割り算して、大まかな時間を出して計算します。
例えば、以下のような時間配分が基本となると思います。時間をかけ空いてもそれ以上点数は取れないので、その時間を迎えそうであれば、さっさと次の問題に移ることが必要です。
Weight 10% = 4分
Weight 25% = 10分
Weight 50% = 20分
Paper 1(午前中の問題)での思考回路とアプローチ
さてさて、総心を落ち着けて、試験問題を裏返すと、以下のような問題が目に飛び込んできました。
Question 1
With reference to climate, soil and winemaking, account for the differences in style between Sauvignon Blanc wines from the Loire Valley and those from New Zealand’s various regions.
Question 2Give a detailed account of the regulations in Rioja, covering:
a) permitted grape varieties (15% weighting)
b) ageing requirements (30% weighting)
c) geographical delimitations (35% weighting)
Why were the changes introduced by the Consejo Regulador in 2018 regarded as necessary? (20% weighting)
Question 3Assess the strengths and weaknesses of Argentina as a wine producing country.
Question 4
Describe the characteristics of Greece’s most important indigenous varieties and comment briefly on the wines they produce. (75% weighting)
What are the challenges in marketing these wines outside Greece? (25% weighting)
流石に、WSET DiplomaでD3まで来ている方は、上記の問題を見てそのヤバさや翻訳は困らないと思いますが、この問題を1問A4裏表で2枚分(4ページ分)記載することが求められると思うと、腕の疲労とのバトルになります・・・!
ちなみに、日本語でみると以下のとおりです。
第1問
気候、土壌、および醸造手法に言及しながら、ロワール渓谷のソーヴィニヨン・ブランとニュージーランド各地域のソーヴィニヨン・ブランとの間におけるワインスタイルの違いの理由を説明しなさい。
第2問
リオハの規定について、以下の項目を網羅して詳細に説明しなさい。
a) 認可ブドウ品種(配点:15%)
b) 熟成規定(配点:30%)
c) 地理的区分(配点:35%)
2018年に原産地呼称統制委員会(Consejo Regulador)によって導入された改定が、なぜ必要とみなされたのか理由を述べなさい。(配点:20%)
第3問
ワイン生産国としてのアルゼンチンの強み(Strengths)と弱み(Weaknesses)を評価しなさい。
第4問
ギリシャの最も重要な土着品種の特徴を記述し、それらから造られるワインについて簡潔にコメントしなさい。(配点:75%)
これらのワインをギリシャ国外でマーケティングする際の課題は何ですか。(配点:25%)
さて、この問題を見た瞬間に、実は問3は簡単かなと思いました。なぜならば、事前に生成AI含めて、回答案まで作った問題だったからです。
しかし、問3は、Assessというアカデミック・ライティング要素が求められるコマンド動詞であり、Weightの記載がないことから、何が部分点になるのか分からないことに気づきました。(おそらく、D2のワイン・ビジネスで求められるPESTELや5P’sの観点から、SWOTで当てはめていけば良いとは思いますが・・・、)

ですので、私は、戦略的に少しでも部分点を稼ぎながら合格に近づくために、問3を捨てることにしました。
問1も、Weightが記載ないので、部分点がないじゃないかと思う人もいるかも知れませんが、ロワールの①気候、②土壌、および③醸造手法、ニュージーランドの④気候、⑤土壌、および⑥醸造手法と6つも要素があるので、それぞれ記載してワインスタイルに紐づけていけば確実に部分点を稼げると思ったので、迷いはありませんでした。
KSKちなみに、アカデミックライティングの話ですが、問3では、「the strengths and weaknesses」と複数形になっていることに気づきましたか?日本語では同じ「強味と弱味」になってしまいますが、複数形で聞かれているので、強味と弱味はそれぞれ複数答えないと、問題文に答えていないということで、確実に減点(ひょっとすると答えていないと0点)という事になってしまいます。
こういう観点でも英語の勉強はしておいたほうが良いです。私は英国留学でこうした観点を勉強していたので、非常に助かりました。
問1 ロワールとニュージーランドのソーヴィニョン・ブラン比較
これは、ロワール(SancerreやPouilly-Fuméなど)とニュージーランド(Marlboroughなど)のソーヴィニヨン・ブランにおけるスタイルの違いを、気候・土壌・醸造手法の3軸から解説する設問ですので、少なくとも6要素はそれぞれ書けるなと思いました。
そして、それぞれの要素ごとに何を書くべきかマトリクスで整理して、それがどのようにワインのスタイルに影響していくのかをざっとメモ書きしていきました。(時間が少ないので、単語メモだけですが・・・笑)
例えば、土壌による違いは、一番分かりやすいと思います。ロワールのサンセールであれば、Caillottes、Terre Blanches、そしてSilexでワインのスタイルが変わることや、ニュージーランドのマールボロであれば、Wairau、Southern Valleys、そしてAwatereで河川や山からClayが多いのか石が多いのかで、より熟すのか酸を保持するのかなどスタイルに影響を与えることがそれぞれ具体例をもって説明できるからです。
あとは、醸造でも生産者のスタイルの違いなども入れると説得的だと思い、フランソワ・コタとアンリ・ブルジョワで樽のアプローチが異なることなどを補足するなど、for exampleとして例を入れていきながら説得的であろうと努めました。
ただ、あくまで、ロワールとニュージーランドと言う広域の話を聞かれているので、上記の者は、具体例であるという説明の仕方であるように注意しました。そして、構造上も6つの要素をそれぞれ説明することはできたと考えています。
それぞれの影響が、それぞれスタイルにどのように影響を与えているか、コマンド動詞がAccount forという因果関係を求めるものであるので、howを意識して書けたと思います。
この時点では、最低限テキストの要素は入れ込めたと思いますが、どうしてもマールボロの産地の違いがうろ覚えだったりしたので、ちょうどpassのあたりかなと思いながら書いていました。
ちなみに、こちらの結果は「Pass」でした。
問2 リオハの規定と2018年改定の必要性
リオハの原産地呼称規定を多角的に問う総合問題です。配点比重が明記されているため、ボリューム配分通りに時間を進めていきました。最初から結論を書いてしまいますが、一番うまく書けたと思いましたが、こちらだけは唯一「Fail」となってしまいました・・・。配点の大きいb)とc)がうろ覚えだったことが原因だと思います。
a)については、黒も白も両方のブドウ品種を覚えていたので、全て一覧で書くことができました。黒ブドウについては、GracianoやMazuelo、Maturana Tintaまで覚えていたので、ほぼ満点レベルで書けたとは思います。
しかしb)とc)がやはり数字や違いをうろ覚えであったことが、落ちてしまった要因だと思います。赤ワインと白・ロゼワインで、Crianza, Reserva, Gran Reservaの樽熟成・瓶熟成月数を記載できておらず、若干当てずっぽうで記載してしまったことは否めません・・・。また、c)についても、Alta、Alavesa及びOrientalの違いが、ぼんやりしてしまい、土壌や気候の違いが明確に説明できなかったことがこちらのセクションの敗因かと思います。
2018年改正については、これまでの過去問からすると頻出テーマだったので、単一畑(Viñedo Singular)やゾーン(Vino de Zona)、村名(Vino de Municipio)の導入など、従来の「熟成期間依存」から「テロワール重視」へのグローバルなトレンド対応と品質差別化の必要性は一気に書けたと思います。
この反省や視点を踏まえて以下の記事をまとめていますので、ご覧ください!


問4 ギリシャの土着品種と海外マーケティングの課題
前半(75%)ではAssyrtiko, Xinomavro, Agiorgitikoなどの主要土着品種の特徴とそれらが産むワインスタイルを記述し、後半(25%)で輸出市場におけるマーケティングの難しさを論じる問題です。
ここで若干迷ったのは、most importantという最上級になっているので、一つの品種で書くのか・・・?と思ってしまいましたが、75%も配点があるのに、そんなことはないだろう・・・?と思い書き始めました。また、よく見るとvarietiesと複数形になっていますし、Passもしているので問題なかったかなと思います。
主要な3品種の特徴やワインのスタイルはうろ覚えもありましたが、幅広いスタイルで書かれていることやどこの産地表記で作られているかも含めて一定程度は書くことはできたかなと思います。
後段は、まさしくワインビジネスとの融合問題で、マーケティング的な話を書きました。難解な品種名や産地表記の知名度の低さ、語学・ラベル表記の壁、プレミアム価格帯におけるブランド認知の不足などをマーケティング課題として挙げ、課題(challenge)であるとまとめました。
Paper 2(午後の問題)での思考回路とアプローチ
午前中に3/5の問題が終わったわけですが、全く書けなかった問題はなかったので、半分以上はしっかり書けたという自信はありました。午後は、ちゃんと部分点でもいいので、少しでも稼いで、合格に近づくようにしていこうという心持ちでした。
午後までは、1時間あったのですが、私は緊張するとご飯が通りにくいので、カロリーメイトと頭を働かせるためにチョコレートばかり食べていました。幸い?会場は外がよく見える風光明媚な場所にあるので、遠くを見たりしてリラックスしていました。
正直テキストを見返すと、午前中のニュージーランドやロワールの場所が嫌でも目に入ってしまうと思ったので、見返すことはしませんでした。
ということで、ここから午後の問題です。
Question 5
Explain how factors in the growing environment impact Riesling production and wine style in Finger Lakes, Wachau and Clare Valley.
Question 6With reference to climate, soil, grape growing and winemaking, explain how Bordeaux’s Left Bank appellations make so many high-quality RED wines.
Question 7Using examples from around the world, explain why rosé wines vary so much in style, quality, and price.
見た瞬間の感想は、思った以上にシンプルな問題だなという印象でした。何がシンプルかといえば、過去問をちゃんと見ておけば、WSETが好きなロゼワインのスタイルの違い(特に、スペインのナバーラの伝統的な濃いロゼワインが何回出ている)が頻出であることは理解できるので、行けるなと思いました。
ただ、これも午前中と同様に、ロゼの種類とスタイルを的確にピックアップすることができなくては部分点がもらえないことと、品質や価格に関してうろ覚えであるのが危険だと思い、こちらも部分点を確実に稼いでいくことができる問5と問6を選ぶことにしました。
なお、翻訳は以下のとおりです。
第5問
フィンガー・レイクス、ヴァッハウ、およびクレア・ヴァレーにおいて、生育環境における諸要因がリースリングの生産とワインスタイルにどのような影響を与えるかを説明しなさい。
第6問
気候、土壌、ブドウ栽培、および醸造手法に言及しながら、ボルドー左岸のアペラシオンがなぜこれほど多くの高品質な赤ワインを生産できるのか、その理由を説明しなさい。
第7問
世界各地の実例を用いながら、ロゼワインのスタイル、品質、および価格がこれほど大きく異なる理由を説明しなさい。
問5 リースリングのスタイル比較(フィンガー・レイクス, ヴァッハウ, クレア・ヴァレー)
気候帯も大陸も異なる3つの名産地(アメリカ・フィンガーレイクス、オーストリア・ヴァッハウ、オーストラリア・クレアヴァレー)におけるリースリングの生育環境(growing environment)とスタイルへの影響を解説(Explain)する設問です。
最後の1ヶ月の復習などで主要品種の国ごとの比較などを意識していたので、リースリング比較等だったらこういう国や産地の違いが出るかなと思っていたので、ある程度はドンピシャでした。
フィンガーレイクスの湖による温度調節機能と高い酸、ヴァッハウのドナウ川の微気候やテラス状畑が生むリッチなスタイル、クレアヴァレーの標高と夜間の冷却がもたらすライム風味とドライな骨格など、環境因子が最終的なスタイルへ与える影響を論理的につなぐことを意識しました。
多少過剰だったかもしれませんが、具体例として、オーストリアであればgneissなどの土壌に加えて、Vinea Wachauなどの違い(Steinfeder、Federspiel、Smaragd)まで書いたり、オーストラリアであれば、Polish HillやWatervaleでの土壌の違いによるワインのスタイルの違いまで書くことができたので、かなり部分点まで稼ぎに行こうという気概は見せられたかなと思います。
こちらは結果はPassでした。
問6 ボルドー左岸の高品質赤ワインを産む要因
ボルドー左岸(Médoc, Gravesなど)がなぜ世界最高峰の赤ワインを産み出し続けられるのかを4つの要素から包括的に説明する設問です。これは、WSET レベル3でも書ける、ものすごく一般的な問題であるという印象です。
以下のような、4要素を書いていくので、それぞれ25%のWeightかなという意識のもと、それぞれA4を一枚で書いていくことを心がけました。
- Climate: 大西洋とジロンド川による温和な海洋性気候、ランドの森による防風効果。
- Soil: 排水性に優れ、温まりやすい砂利質(Gravel)土壌とカベルネ・ソーヴィニヨンの成熟。
- Grape Growing: 高密度植栽、キャノピーマネジメント、グリーンハーベスト。
- Winemaking: 伝統的な浸漬(Maceration)、オーク樽熟成、ブレンド技術(Assemblage)の精密さ。
当然、要素だけではなく、あくまでなぜ高品質になるのか?ということを問われているので、そこへの説明ができないと点数はもらえないと理解して書いていきました。
ここは一定の内容は書けたので最低限Passは来るかなと思い、結果はPassでした。
試験を終えて
終わった時点で、ほぼすべての時間を使い果たし、誤字脱字チェックまで時間を使うことができました。
過去、D3以外の試験で合格した時の感覚に似ているくらい記述はできたので、流石に合格していないわけはないだろうな・・・くらいの気持ちで合格発表までは迎えることができました。ですので、10月に向けてまた勉強やり直そうと思わなくてもいいくらいだったので、8月の結果発表までは心穏やかに過ごすことができたと思います笑
D3 Theoryを突破するための実戦的アドバイス
コマンド動詞などのアドバイスもありますが、やはりアカデミックライティングでも用いられるPEEL構文のような考え方を自分で書けるかは非常に重要であると思います。
PEEL構文による段落構成とは?
「Point(主張)→ Explanation(理由・説明)→ Example(具体例)→ Link(結論への接続)」のフレームワークを意識することで、英語表現に迷っても論理が破綻しないようにできる。
例えば、今回のギリシャの品種の問題であれば、以下のような使い方になると思います。
- P (Point):
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アシルティコはギリシャで最も有名な白ブドウ品種のひとつであり、酷暑の環境下でも高い酸度を維持できる卓越した生理的特性を有している。
- E (Evidence):
-
サントリーニ島(PDO Santorini)を故郷とするこの品種は、極めて乾燥し、強風が吹き荒れる火山性土壌に適応している。フィロキセラ・フリーの自根の古木が多く、伝統的な籠型の仕立て(クルーラ)により、風と強烈な紫外線から果房を守ることができる。また、醸造面では、ステンレスタンクによる保護的醸造から、樽発酵、さらには天日干しによる甘口のヴィンサントまで多様なスタイルが存在する。
- E (Explanation):
-
生物学的プロセスとして、アシルティコは糖度が上昇し潜在アルコール度数が14.5% abvを超えても、pHが低く(3.0以下)高い総酸度を保持する稀有なメカニズムを持っている。また、火山灰、軽石、砂からなる痩せた土壌は樹勢を抑制し、小粒で凝縮した果実をもたらす。樽熟成を施した場合、品種由来の柑橘系の風味に加えて、スモーキーさや火打石のようなミネラル感が統合される。
- L (Link to LQP):
-
その結果、アシルティコは「突出した(Outstanding)」品質と長期熟成能力を備えたスタイルを確立しており、国際的なファインワイン市場においてプレミアムからスーパープレミアムな価格設定を行うことができる。



今回、実際の試験のときに何を考えながら試験問題を解いていたのかをトレースして再現してみました。
これからDiplomaを受験する皆さまの一助となれば望外の喜びです!







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