【完全ガイド】ワイン初心者のための「フランス語の発音と綴り」完全ガイド〜ワインのラベルを正しく読む〜 その1

著者が訪れたフランス・シャルル・ド・ゴール・空港のフランス語看板

ボルドー(Bordeaux)やブルゴーニュ(Bourgogne)のワインを手に取ったとき、エチケット(ラベル)の綴りがどうしてそう発音されるのか、疑問に思ったことはありませんか?


フランス語は、英語と違って、綴りを見ただけで発音がほとんど決まります。このルールさえ覚えれば、初見のドメーヌ名や畑名も、自信を持って発音できるようになります。

KSK

いきなり一般的なフランス語の教科書を読んでも例が分かりづらく、実践でしか勉強できなかった記憶があります。こんなワインに特化した綴りのガイドがあったらよかったのになとの思いで作りました!!

目次

語尾の発音はどうすべきか

語尾の子音は発音しない

フランス語最大の特徴と言ってよいのは、最後の子音(すなわちa,i,u,e,oではない文字)については、発音しないということが基本となります。

原語発音記号カタカナ発音(読み)意味・補足
Bordeaux[bɔʁdo]ボルドーフランス最大の銘醸地。末尾の x は複数形を表しますが読みません。
Cabernet[kabɛʁnɛ]カベルネ代表的な赤ワイン品種。語尾の t は発音せず、「ネ」と伸ばします。
Clos[klo]クロ「石垣で囲まれた畑」。末尾の s は読まず、単数・複数とも同じ音です。
Grand[ɡʁɑ̃]グラン「偉大な」。末尾の d は読みません。特級(Grand Cru)の表記に必須です。
Merlot[mɛʁlo]メルロー主要な赤ワイン品種。末尾の t は読まないため「メルロット」とはなりません。
Pinot[pino]ピノピノ・ノワール等の品種群。末尾の t は読みません。
Montrachet[mɔ̃ʁaʃɛ]モンラッシェ世界最高峰の白ワインの畑。末尾の t は読まず、「シェ」と終わります。
Sauternes[sotɛʁn]ソーテルヌ世界三大貴腐ワインの産地。末尾の s は読みません。
Muscadet[myskadɛ]ミュスカデロワール地方の白ワイン。末尾の t は読まずに「デ」と発音します。

複数形の発音

フランス語では、複数形の場合名詞の語尾にsやxを付けます。その際に、最後の子音のルールと同様に、発音しなくなります。

原語発音記号カタカナ発音(読み)意味・補足
Vins[vɛ̃]ヴァンワイン(複数形)。単数形(Vin)と発音は変わりません。
Vignes[viɲ]ヴィーニュブドウの樹(複数形)。Vieilles Vignes(古樹)などで頻出。
Coteaux[koto]コトー斜面(複数形)。産地名の一部やカテゴリー名によく使われます。
Vieux[vjø]ヴィユー古い(複数形)。熟成期間や樹齢の古さを表す際に使われます。
Grands[ɡʁɑ̃]グラン偉大な(複数形)。Grands Crus(特級)などの修飾語です。
Bois[bwa]ボワ木・森・樽(複数形)。樽のニュアンスや畑名に登場します。
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発音したら同じじゃないか!と言われますが、これらは耳で聞いて識別するものではなく、文字で見て確認するものであると言われています。

発音される語尾

フランス語の発音される語尾としての有名な「CaReFuLルール」と言うものがあります。これは、単語の末尾が C, R, F, L (英語のCarefulに含まれる子音)で終わる場合、フランス語では例外的に発音することが多いです。

  • C: Sec (セック)
  • R: Primeur (プリムール) ※-erで終わる動詞以外
  • F: Neuf (ヌフ / 「新しい」や地名Châteauneufなど)
  • L: Alcool (アルコール)
原語発音記号カタカナ発音意味・補足
Brut[bʁyt]ブリュット辛口の意味。末尾の t をはっきり発音します。
Sec[sɛk]セック辛口の意味。末尾の c を発音します。
Alcool[alkɔl]アルコールアルコールの意味。末尾の l を発音します。
Primeur[pʁimœʁ]プリムール新酒、または先物取引。末尾の r を発音します。
Levur[ləvyʁ]ルヴュール酵母の意味。末尾の r を発音します。
Sud[syd]シュッド南の意味(Sud de Franceなど)。末尾の d を発音します。
Cap[kap]キャップ瓶のキャップや「岬(地名)」を指す際、末尾の p を発音します。
Carafe[kaʁaf]カラフデキャンタ(カラフェ)。末尾の f (厳密にはfe)の音を発音します。
Bergerac[bɛʁʒəʁak]ベルジュラック南西地方のAOC。末尾の c は、「CaReFuL」の法則に従い、はっきりと発音します。
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ただ、この発音ルールも当然例外があるので、注意は必要です。私の印象だと、中世の百年戦争ごろまでイングランドの領土だったボルドー周辺などは少し発音ルールの例外が多いような気がしています。

hは発音すべきか

フランス語において「h」は「無音のh」と呼ばれ、単語の先頭にあっても途中であっても、決して発音されることはありません。また、先頭のhは存在しないものとして扱い、前の単語と繋げて読む(後述するリエゾンやエリジオン)原因にもなります。

原語発音記号発音意味・補足
Hermitage[ɛʁmitaʒ]エルミタージュローヌ地方の銘醸地。「ヘルミタージュ」とは読みません。
Humidité[ymidite]ユミディテ湿度の意味。セラー管理や貴腐菌(ボトリティス)の発生に欠かせない要素です。
Hiver[ivɛʁ]イヴェールの意味。ブドウの休眠期や剪定の時期を説明する際に使われます。
Haut[o]オー高い・上部のの意味。Haut-Médoc(オー・メドック)など地名の冠に多用されます。
Hectare[ɛktaʁ]エクタールヘクタール(面積)。ドメーヌの所有面積などを表す単位です。
Hospices[ɔspis]オスピス施療院の意味。Hospices de Beaune(オスピス・ド・ボーヌ)が有名です。
Herbacé[ɛʁbase]エルバセハーブのような、青っぽい。テイスティングで未熟なブドウや品種特性を指す用語です。
Harmonie[aʁmɔni]アルモニ調和(ハーモニー)。ワインのバランスが取れて
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一般的な解説では、hotelの発音が、ホテルではなく、オテルということが有名かと思いますが、こちらはワイン用語で学ぶフランス語ですので、あえて記載していません笑

母音に挟まれたsとは

フランス語には「母音に挟まれた s は濁って [z](ザ行)の発音になる」という非常に重要なルールがあります。ワイン用語にはこのケースが多く、正しく「濁らせる」ことで一気に現地流の響きになります。

原語発音記号発音意味・補足
Rosé[ʁoze]ロゼロゼ(桃色)。oとéに挟まれているため、「ロセ」ではなく濁ります。
Maison[mɛzɔ̃]メゾンシャンパーニュの生産者、家。aiとoに挟まれているため濁ります。
Réserve[ʁezɛʁv]レゼルヴリザーブ(貯蔵ワイン)。éとeに挟まれているため濁ります。
Dose[doz]ドーズ投与量(ドザージュの語源)。oとeに挟まれているため濁ります。
Raisin[ʁɛzɛ̃]レザンブドウの粒。aiとiに挟まれているため濁ります。

リエゾン(liaison)とは

フランス語を学ぶのに適した風景

フランス語のリエゾン(Liaison)は、本来読まない単語末の子音( s や t など)を、次に続く母音と繋げて発音するルールです。ワインの世界では、2つの単語が組み合わさった時にこの現象が起き、響きがガラッと変わります。

原語発音記号発音意味・補足
Saint-Émilion[sɛ̃ temiljɔ̃]サン・テミリオンボルドー右岸の主要AOC。ハイフンを挟んだ t と É が繋がり「テ」となります。
Saint-Estèphe[sɛ̃ tɛstɛf]サン・テステフボルドー・メドックの主要AOC。こちらも t と E が繋がります。
Les Amoureuses[le zamuʁøz]レ・ザムルーズ「恋する乙女たち」。ブルゴーニュで最も有名な一級畑の一つ。s と A が繋がります。

エリジオン(élision)とは

フランス語のエリジオン(Élision)とは、母音で終わる単語(le, la, de など)の次に、母音(または無音のh)で始まる単語が来た場合に、母音同士がぶつかるのを避けるため、前の母音を省略してアポストロフィ(’)で繋ぐルールです。

原語発音記号発音意味・補足
L’Hermitage[lɛʁmitaʒ]レルミタージュローヌ地方の銘醸地。le + Hermitage。無音のhにより、母音が省略され繋がります。
Vin d’Alsace[vɛ̃ dalzas]ヴァン・ダルザスアルザスのワイン。de + Alsace。地名が母音で始まる場合の最も一般的な形です。
D’Yquem[dikɛm]ディケム貴腐ワインの王ディケム。de + Yquem。Yは母音扱いのためエリジオンし「ディ」となります。
L’étoile[letwal]レトワールジュラ地方のAOC。la + étoile(星)。母音eがぶつかるためエリジオンします。
Côte d’Or[kot dɔʁ]コート・ドールブルゴーニュの黄金の丘。de + Or(黄金)。もっとも有名なエリジオンの例の一つです。

さいごに

ワインの世界において、フランス語のルールを知ることは、単なる語学の習得以上の価値があります。エチケット(ラベル)に書かれた「s」や「h」がなぜ発音されないのか、なぜ特定の場所で音が繋がるのか。その理由が論理的に理解できると、暗記に頼っていたAOC名や畑名が、意味を持った「生きた言葉」として頭にスッと入ってくるようになります。

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WSET Diplomaなどの上位資格を目指す方にとっても、正しい発音を身につけることは、生産者への敬意を示す第一歩であり、自身の専門性への自信にも繋がります。何より、原語で書かなければならない試験において、発音から綴りに入ることは、語字脱字を減らすうえで非常に重要ですし、自身も発音から入ったことで、綴りなどは全く困らずに試験に挑めました。

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この記事を書いた人

とある企業の会社員
突然ワインに目覚めて、その奥深さにハマる。
WSET Lv.3のほか、日本ソムリエ協会認定ワインエキスパート、チーズプロフェッショナル協会認定チーズプロフェッショナルも保有し、現在は、WSET Diploma(WSET ディプロマ)に挑戦中であり、最終試験の結果待ちまで来ている。
フランス留学経験もあり、10か国100か所以上のワイン関連の自治体を巡った経験を基に、ワインの情報や勉強をもっと気軽にできるよう、世界のワインの情報を統合してお届けできるようサイトを運営していきます。

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