ベルデホ(Verdejo)│スペインを代表する白ワイン用ブドウ品種を解説

ベルデホ(Verdejo)│スペインを代表する白ワイン用ブドウ品種を解説
目次

1. 概要

ベルデホ(Verdejo)は、スペイン北西部のルエダ(Rueda)を中心に栽培されている白ワイン用ブドウ品種です。スペインで最も重要な白ブドウのひとつであり、フレッシュでアロマティックな辛口白ワインの原料として高く評価されています。

その名の通り緑がかった果皮を持ち、柑橘類やハーブの香り、爽やかな酸、ほのかな苦味を伴う後味が特徴です。伝統的には酸化熟成されたスタイルが主流でしたが、近年では冷温管理されたステンレスタンクを用いたフレッシュなスタイルが主流となっています。ベルデホの品質と個性を最大限に引き出すため、早朝の手摘みによる収穫や低温での発酵が行われることが一般的です。

ルエダでは、原産地呼称制度(DO)によってベルデホが中心品種とされ、最低でも85%以上の使用が義務付けられた「ルエダ・ベルデホ」というラベル表記もあります。

2. 名前の由来

「ベルデホ(Verdejo)」という名前は、スペイン語の「verde(緑)」に由来しており、その果皮の色合いにちなんで名付けられました。スペイン語では「ヴェルデホ」に近い発音ですが、日本では「ベルデホ」と呼ばれるのが一般的です。

この品種の起源については諸説ありますが、中世に北アフリカからスペインに伝わったとされる説や、ルエダ地方の土着品種として長い歴史を持つという説があります。いずれにしても、ベルデホは数百年にわたりスペインの乾燥した内陸地域で育まれ、今日の高品質ワインに進化してきました。

3. 栽培

ベルデホは暑く乾燥した気候に非常に適しており、スペイン内陸部のような昼夜の寒暖差が大きい地域に最適な品種です。糖度の上昇が早く、同時に酸も保ちやすいため、熟した果実味と爽やかな酸のバランスが取れたワインが生まれます。

栽培特性

  • 萌芽(budding):やや早め
  • 成熟(ripening):中庸〜早熟。8月下旬〜9月上旬に収穫されることが多いです。
  • 樹勢(vigour):中程度で、管理しやすい品種です。
  • 収量(yield):適度な収量。過剰に収量を上げると品質が落ちるため注意が必要です。
  • 病害耐性:比較的病気に強く、特に乾燥地ではカビ系の病害が少ないです。
  • 気候適性:高温乾燥に強く、灌漑の少ない環境でも育成可能。

ベルデホは酸化に対してやや弱い傾向があるため、収穫後は速やかに醸造所に運ばれ、低温での醸造が行われます。そのため、機械収穫ではなく夜間の手摘みにこだわる生産者も少なくありません。

4. 味わい

ベルデホのワインは、香り高く、飲みやすく、食事にも合わせやすいことで人気を集めています。そのスタイルは生産者や醸造方法によって幅がありますが、一般的には以下のような特徴を持ちます。

一般的な特徴

  • 色調:淡いレモンイエロー、若いうちは緑がかった輝き
  • 香り:ライムやグレープフルーツ、白桃、メロン、ハーブ(フェンネルやアニス)、白い花
  • 味わい:フレッシュでアロマティック。酸味がしっかりしており、口当たりはクリーン。後味にほのかな苦味を伴うのが特徴。
  • 熟成スタイル:一部の高級ワインではオーク樽で発酵・熟成されることもあり、ナッツやヴァニラのニュアンスが加わります。

ベルデホは若飲みタイプが主流ですが、優れたワインは瓶内熟成にも耐え、数年の熟成でより複雑な味わいを見せてくれます。

5. 主な生産地

スペイン

  • ルエダ(Rueda DO)
    ベルデホの本拠地であり、スペイン国内で最も多くベルデホが栽培されている地域です。標高700~800mの高地に位置し、昼夜の寒暖差が品質の高いブドウを育みます。ここでは、DOルエダとしてベルデホ主体のワインが多数生産されています。
  • カスティーリャ・イ・レオン州全域
    ルエダ以外でも、近隣地域でベルデホの栽培は盛んであり、Vino de la Tierra(地酒)として高品質なワインも見られます。

その他の地域

  • アメリカ(カリフォルニア)
    スペイン系移民の影響で一部地域でベルデホが導入されていますが、生産量は限定的です。
  • オーストラリア
    マイナー品種として一部のブティックワイナリーが注目し始めています。
  • フランスやポルトガルでは、同名または類似名の品種が存在しますが、ベルデホとは異なるブドウである可能性が高く、混同には注意が必要です。

6. 代表的なシノニム

ベルデホはスペインを中心に栽培されてきたため、シノニムは比較的少ないですが、歴史的な記述や地域によって異なる呼び名が存在しています。

シノニム名名称の由来・背景主な生産地
Verdejo(ベルデホ)スペイン語の「verde(緑)」に由来スペイン(ルエダ)
Verdeja(ベルデハ)古い呼び名、ルエダ地方の方言的表現スペイン(カスティーリャ地方)
Verdejo Blanco(ベルデホ・ブランコ)「白のベルデホ」を意味する。分類名として使われることもあるスペイン
Verdello(ヴェルデッロ)イタリアやポルトガルの品種名と混同されることがあるが、別品種の場合が多い

おわりに

ベルデホは、スペイン白ワインの真髄ともいえる存在であり、その鮮烈な香りとバランスの取れた味わいは、幅広い料理と好相性です。魚介料理やフリット、グリルした野菜、アジア料理などとのマリアージュも楽しめる万能タイプの白ワインです。

冷涼感あふれるスタイルから、樽熟成による複雑な表情まで幅広く展開されているため、ワイン初心者から愛好家まで誰もが楽しめる品種といえるでしょう。

まだ試したことがない方は、ぜひ「ルエダ・ベルデホ」とラベルに記された一本を選び、そのフレッシュな魅力を体験してみてください。

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この記事を書いた人

とある企業の会社員
突然ワインに目覚めて、その奥深さにハマる。
WSET Lv.3のほか、日本ソムリエ協会認定ワインエキスパート、チーズプロフェッショナル協会認定チーズプロフェッショナルも保有し、現在は、WSET Diploma(WSET ディプロマ)に挑戦中。
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