テンプラニーリョ(Tempranillo)│スペインを代表する赤ワイン用ブドウ品種の魅力

テンプラニーリョ(Tempranillo)│スペインを代表する赤ワイン用ブドウ品種の魅力
目次

1. 概要

テンプラニーリョは、スペインを中心に栽培される赤ワイン用ブドウ品種で、スペインワインの主要品種として知られています。芳醇な果実味とバランスの良い酸味、柔らかなタンニンが特徴で、赤ワイン愛好家から幅広い支持を得ています。

スペイン北部のリオハやリベラ・デル・ドゥエロ、トロ、カタルーニャなどが主な産地で、単一品種ワインはもちろん、他の品種とブレンドしても高い評価を受けています。特に熟成による複雑さとまろやかさが楽しめるため、樽熟成を施したリザーブやグランリザーブクラスのワインも多く造られています。

2. 名前の由来

「テンプラニーリョ(Tempranillo)」の名前は、スペイン語の「temprano(早い)」に由来しています。これは、この品種が他の多くの赤ブドウ品種よりも早めに成熟する特徴を示しています。

また、地方によって呼び名が異なり、例えばリオハ地方では「ティンタ・リオハ(Tinta Rioja)」、ポルトガルでは「ティンタ・ロリス(Tinta Roriz)」や「アラゴネス(Aragonez)」と呼ばれることもあります。

3. 栽培

テンプラニーリョは、主に温暖で乾燥した気候を好む品種ですが、比較的幅広い気候条件に適応できます。

  • 萌芽(budding):早め。名前の由来にもなっている通り、早い段階で芽が出ます。
  • 成熟(ripening):早熟から中程度。スペインの乾燥した気候では早めに成熟し、収穫は9月下旬から10月上旬に行われます。
  • 樹勢(vigour):中程度。適度な樹勢で管理しやすいです。
  • 収量(yield):中程度。収量をコントロールすることで品質が向上します。
  • 耐病性:比較的強く、うどんこ病や灰色かび病に対する耐性があります。
  • 好む土壌:粘土質、石灰質、砂利の混じった土壌が適しています。

特に土壌の水はけが良く、昼夜の温度差が大きい地域で栽培されると、酸味と果実味のバランスに優れたワインが造られます。

4. 味わい

テンプラニーリョのワインは、赤い果実や黒い果実の香りを主体とし、まろやかで柔らかいタンニンとしっかりした酸味が調和しています。

  • 外観:明るいルビー色から濃いルビー色まで幅があります。
  • 香り:チェリー、イチゴ、プラム、トマトの葉、バニラやスパイス、革、土の香りも感じられます。樽熟成を経ると、バニラやココナッツ、トースト香が強まります。
  • 味わい:フルボディからミディアムボディで、豊かな果実味と適度な酸味、丸みのあるタンニンが特徴です。熟成によって複雑味が増し、スパイスやタバコのニュアンスも現れます。

テンプラニーリョは、比較的飲みやすいスタイルから長期熟成タイプまで幅広く楽しめます。肉料理やトマトソースを使った料理、チーズとの相性が良いです。

5. 主な生産地

スペイン

  • リオハ(Rioja)
    スペインを代表するワイン産地の一つで、テンプラニーリョ主体の赤ワインが主流です。特にリオハのリザーブやグランリザーブは長期熟成に耐えるエレガントな味わいで有名です。
  • リベラ・デル・ドゥエロ(Ribera del Duero)
    標高が高く寒暖差が大きいこの地域では、力強く凝縮感のあるテンプラニーリョが生まれます。タンニンが豊富で、熟成によってより複雑さが増します。
  • トロ(Toro)
    非常に力強いフルボディのワインを生産。気候は暑く乾燥しており、しっかりとした構造のワインになります。
  • プラド・レセーロ(Prado de la Sierra)なども注目されています。

ポルトガル

ポルトガルでは「ティンタ・ロリス(Tinta Roriz)」や「アラゴネス(Aragonez)」と呼ばれ、ドウロ地方などでワイン生産に使われています。ポルトワインのブレンドにも用いられ、赤ワインでも独特の風味を持ちます。

その他の地域

  • アルゼンチン
    近年注目を集めており、特に高地のアンデス山脈周辺で栽培が進んでいます。
  • アメリカ
    カリフォルニアやワシントン州などでも栽培され、暖かい気候を活かした果実味豊かなスタイルが造られています。

6. 代表的なシノニム

テンプラニーリョは地域や国によって異なる呼称が存在し、以下に主なシノニムを表形式でまとめます。

シノニム(読み方)名前の由来・背景主な生産地
Tinta del País(ティンタ・デル・パイス)「この土地の赤(ワイン用ブドウ)」を意味し、リベラ・デル・ドゥエロにおける呼称スペイン(リベラ・デル・ドゥエロ)
Tinto Fino(ティント・フィノ)「上品な赤(ブドウ)」という意味で、リベラ・デル・ドゥエロで使われるスペイン(リベラ・デル・ドゥエロ)
Cencibel(センシベル)ラ・マンチャやバルデペーニャスでの呼び名。香りの豊かさと果実味を重視した栽培が多いスペイン(ラ・マンチャ、バルデペーニャス)
Ull de Llebre(ウイ・デ・リェブレ)カタルーニャ語で「野うさぎの目」という意味の詩的な名称スペイン(カタルーニャ)
Tinta de Toro(ティンタ・デ・トロ)トロ地方特有のクローンで果皮が厚く、タンニンが強いのが特徴スペイン(トロ)
Tinta Roriz(ティンタ・ロリス)ポルトガルでの呼称。ドウロやダン地方で重要な黒ブドウ品種の一つとして利用ポルトガル(ドウロ、ダン)
Aragonez(アラゴネス)アレンテージョ地方での呼び方で、「アラゴン地方の品種」という意味ポルトガル(アレンテージョ)
Tempranilla(テンプラニーリャ)テンプラニーリョの縮小形で、主に古い文献や地方で見られる表記スペイン(一部地域)
Valdepeñera(バルデペニェラ)バルデペーニャスに由来し、地域に根ざした呼称スペイン(バルデペーニャス)
Tinta Madrid(ティンタ・マドリード)マドリード周辺で使用される地方的な呼称スペイン(マドリード周辺)
Tempranillo Rioja(テンプラニーリョ・リオハ)リオハで栽培されるタイプを明示的に区別するために使われることもあるスペイン(リオハ)
Ojo de Liebre(オホ・デ・リエブレ)「野うさぎの目」を意味し、カタルーニャ語のUll de Llebreのスペイン語訳スペイン(カタルーニャ、ナバラ)
Tinta de Santiago(ティンタ・デ・サンティアゴ)ガリシア地方での一部使用例あり、稀少スペイン(ガリシア)
Tinto de Toro(ティント・デ・トロ)Tinta de Toroと同義で、熟語の順序違い。トロ特有の力強いワインになることで有名スペイン(トロ)

おわりに

テンプラニーリョは、スペインワインの顔ともいえる赤ワイン用ブドウ品種です。早熟でありながら、しっかりとしたタンニンと豊かな果実味、樽熟成による複雑味が魅力で、幅広いスタイルのワインが造られています。

リオハやリベラ・デル・ドゥエロのクラシックなものから、トロの力強いワイン、そしてポルトガルや世界の他地域での個性的な表現まで、テンプラニーリョは多様な味わいを楽しめる品種です。

ぜひ一度、様々なテンプラニーリョワインを味わい、その奥深さを感じてみてください。

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この記事を書いた人

とある企業の会社員
突然ワインに目覚めて、その奥深さにハマる。
WSET Lv.3のほか、日本ソムリエ協会認定ワインエキスパート、チーズプロフェッショナル協会認定チーズプロフェッショナルも保有し、現在は、WSET Diploma(WSET ディプロマ)に挑戦中。
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