1. 概要
サペラヴィ（Saperavi）は、ジョージア（旧グルジア）原産の赤ワイン用品種で、同国を代表する最も重要なブドウ品種のひとつです。「サペラヴィ」とはジョージア語で「色を与える者」や「染める者」という意味を持ち、その名の通り濃厚な色調と豊かなタンニン、深みのある味わいを生み出すことで知られています。
赤ブドウでありながら果汁も赤い「ティントゥリエ種（着色果汁品種）」に分類される珍しい品種で、フルボディの力強い赤ワインや、ジョージア伝統のクヴェヴリ製法（粘土の壺を用いた醸造）による複雑で熟成ポテンシャルの高いワインが生まれます。
現在ではロシア、ウクライナ、モルドバ、さらにはアメリカやオーストラリアでも栽培が拡大しており、世界的にも注目度が高まっている品種です。
2. 名前の由来
「Saperavi（サペラヴィ）」という名称は、ジョージア語で「染める者」「色を与える者」を意味します。この名前は、果肉にも色素を持つこの品種の特徴を端的に表しており、他の多くの黒ブドウとは異なり、果皮だけでなく果汁にも深い色合いが含まれている点に由来しています。
また、サペラヴィは伝統的にジョージア東部のカヘティ地方で広く栽培されており、同地域の土着品種として何世紀にもわたり重要な存在となっています。
3. 栽培
サペラヴィは寒冷な気候にも比較的強く、病害にも耐性があるため、ジョージアの多様な環境に適応しやすい品種です。樹勢が強く、収量も比較的高いため、品質を重視する栽培には収量制限が鍵となります。
栽培特性
- 萌芽（budding）：比較的早いが、春の遅霜にも一定の耐性があります。
- 成熟（ripening）：中～晩熟型で、10月上旬から中旬にかけて収穫されます。
- 樹勢（vigour）：非常に強い。剪定と収量管理が不可欠です。
- 収量（yield）：高収量。高品質を目指すには制限が必要です。
- 病害耐性：うどんこ病や灰色かび病に比較的強い耐性を持ちます。
- 気候適性：寒冷な気候でもよく育ちますが、晩熟であるため十分な日照が必要です。
また、寒冷な気候でも色づきや糖度がしっかりと得られるため、ワイン造りにおいては非常に扱いやすく、他品種とのブレンドにも適しています。
4. 味わい
サペラヴィは非常に色調が濃く、豊富なタンニンと酸味を持ち、長期熟成に耐える赤ワインを生み出します。品種単体での醸造はもちろん、伝統的なクヴェヴリ製法では、果皮や茎とともに長期間マセラシオンされることで、より複雑な香りと味わいが引き出されます。
主な特徴
- 色合い：非常に濃いガーネット色から黒紫色。果汁も赤いため、ワインも深い色調を持ちます。
- 香り：ブラックベリー、ブラックチェリー、プラムといった黒系果実、スパイス、甘草、時にはなめし革や土っぽいニュアンスも。
- 味わい：しっかりとした酸味とタンニンがあり、フルボディ。バランスが良く、熟成とともにまろやかで複雑な味わいに。
- 余韻：長く続く力強い余韻。スモーキーなフィニッシュを持つことも。
肉料理やグリル、ハードチーズとの相性が良く、伝統的なジョージア料理だけでなく、西洋料理にも合わせやすい品種です。
5. 主な生産地
ジョージア
- カヘティ地方（Kakheti）
ジョージア東部のカヘティ地方はサペラヴィの主要産地であり、伝統的なクヴェヴリワインの中心地でもあります。テルマル地方（Telavi）やグルジャアニ地方（Gurjaani）などが有名です。 - カルトリ地方（Kartli）
首都トビリシに近い地域で、クヴェヴリと近代的なステンレスタンクによる双方のスタイルが造られています。
海外の主な生産地
- ロシア、ウクライナ、モルドバ
ソ連時代にジョージアの技術が持ち込まれ、現在でもサペラヴィは人気があります。 - アメリカ（ワシントン州、ニューヨーク州など）
冷涼な気候を活かしてサペラヴィの栽培が増えつつあり、評価の高いワインも登場しています。 - オーストラリア
南オーストラリア州やタスマニア島などで栽培が始まっており、エキゾチックなブドウとして注目されています。
6. 代表的なシノニム
サペラヴィはジョージアの古くからの土着品種であり、地域や言語によっていくつかの呼び方が存在しています。以下に主なシノニムを表形式でご紹介します。
| シノニム名 | 名称の由来・背景 | 主な生産地 |
|---|---|---|
| Saperavi（サペラヴィ） | ジョージア語で「色を与える者」 | ジョージア全域、ロシア、ウクライナなど |
| Didi Saperavi（ディディ・サペラヴィ） | 「大きなサペラヴィ」の意味。果房がやや大きい亜種。 | ジョージア（カヘティ地方） |
| Kleinber Saperavi（クラインベル・サペラヴィ） | ハンガリーや旧ソ連圏での栽培名 | ウクライナ、モルドバ、ハンガリーなど |
| Saperavi Budeshuriseburi（サペラヴィ・ブデシュリセブリ） | 酸が高く、果皮が厚いサペラヴィのクローンの一種。 | ジョージア（研究機関や一部生産者による） |
おわりに
サペラヴィはジョージアの伝統と気候に育まれた、非常にユニークで魅力的な赤ワイン用ブドウ品種です。果皮だけでなく果汁にも色素を持つティントゥリエ品種として、力強い色調と構造を備えたワインを生み出します。
熟成にも耐えるため、長期保存型のワインとしても優れており、クヴェヴリ製法による伝統的スタイルからモダンな樽熟ワインまで、幅広いバリエーションが存在します。ワイン愛好家からも高く評価されており、今後ますます注目される品種と言えるでしょう。
ぜひ一度、ジョージア産の本格的なサペラヴィワインをお試しになり、その奥深い味わいと香りを体験してみてください。
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