プラヴァッツ・マリ(Plavac Mali)│クロアチアの太陽を浴びた赤ワイン品種の魅力

プラヴァッツ・マリ(Plavac Mali)クロアチアの太陽を浴びた赤ワイン品種の魅力
目次

1. 概要

プラヴァッツ・マリ(Plavac Mali)は、クロアチアを代表する赤ワイン用のブドウ品種です。アドリア海沿岸、特にダルマチア地方の島々や海岸部で広く栽培されており、同国のワイン産業にとって非常に重要な存在となっています。

この品種は、濃厚で果実味に富んだワインを生み出し、アルコール度数が高く、しっかりとしたタンニンと酸を持つのが特徴です。しばしば「地中海版のジンファンデル」と表現されることもありますが、それには理由があります。プラヴァッツ・マリは、ジンファンデル(クロアチアでは「ツリェナク・カステランスキ」と呼ばれる)とドブリチッチという古代品種の自然交配によって生まれた、クロアチア固有の品種なのです。

「マリ」はクロアチア語で「小さい」を意味し、「プラヴァッツ・マリ」は「小さな青い実」を意味します。高温で乾燥した気候に適しており、過酷な環境下でも豊かな風味と個性を表現する力を持っています。

2. 名前の由来

「Plavac」はクロアチア語で「青い」を意味し、「Mali」は「小さい」という意味です。つまり「Plavac Mali」は「小さな青い(ブドウ)」という直訳になります。この名前は、果粒の色とサイズをそのまま表現したもので、現地で長く親しまれてきた伝統的な呼称です。

古くからダルマチア地方で栽培されていたことから、クロアチアの地元文化や歴史とも深く結びついており、多くの家族経営のワイナリーにとっては誇りともいえる品種です。

3. 栽培

プラヴァッツ・マリは地中海性気候によく適応する品種で、特にクロアチア南部の島々(フヴァル島、ペリェシャツ半島、ブラチ島など)や沿岸部で盛んに栽培されています。

栽培特性

  • 萌芽(budding):遅め(春の霜を回避しやすい)
  • 成熟(ripening):遅熟(9月下旬〜10月)
  • 樹勢(vigour):中程度〜高め
  • 収量(yield):中程度(気候条件に左右されやすい)
  • 耐病性:うどんこ病やべと病には比較的耐性あり
  • その他の特徴:乾燥への耐性が高く、急斜面のテロワールにも対応可能

海岸線に沿った急斜面での栽培が多く、手作業での収穫が必要です。そのため、生産者の技術と労力が高品質ワインの鍵を握っています。

4. 味わい

プラヴァッツ・マリは、豊かな果実味、スパイス、骨格のあるタンニンが特徴的な赤ワインを生み出します。熟成にも耐えうる構造を持ち、瓶内で複雑な変化を遂げるポテンシャルがあります。

一般的な味わいの特徴

  • 色調:深みのあるガーネットから濃いルビー
  • 香り:ブラックチェリー、プラム、ドライフィグ、黒コショウ、タバコ、地中海ハーブ
  • 味わい:フルボディ、しっかりとした酸、強いタンニン、アルコール度数が高め(14〜15%以上も珍しくない)
  • 熟成:オーク樽熟成によってスモーキーなニュアンスやバニラ、チョコレートの風味が加わる

若いうちは力強くフレッシュですが、数年の熟成を経ることで複雑さが増し、より洗練された味わいとなります。

5. 主な生産地

プラヴァッツ・マリは、クロアチアの南部に広く分布していますが、以下の地域が特に有名です。

ダルマチア地方(Dalmatia)

  • ペリェシャツ半島(Pelješac)
    最も有名な生産地のひとつで、「ディンガチ(Dingač)」と「ポストゥプ(Postup)」という2つの特級畑(Vrhunsko Vino)が存在します。急斜面で太陽をたっぷり浴びたブドウが、濃厚なワインを生み出します。
  • フヴァル島(Hvar)
    昼夜の寒暖差と強い日照により、凝縮感のある果実味が特徴のプラヴァッツ・マリが生まれます。近年、オーガニックや自然派志向のワイン造りが注目を集めています。
  • ブラチ島(Brač)
    こちらも高品質のワインを生む注目の島。標高差とミネラル豊富な石灰質土壌が、爽やかさと複雑さを加えます。

海外での動向

プラヴァッツ・マリはほぼクロアチア国内で消費されますが、近年ではアメリカ(特にジンファンデルとの関係性に興味を持ったワイナリー)やオーストラリアでも小規模ながら試験栽培が行われています。

6. 代表的なシノニム

プラヴァッツ・マリはクロアチア国内で呼称がほぼ統一されており、シノニムは少なめですが、以下のような名称で知られる場合もあります。

シノニム名名称の由来・背景主な生産地
Mali Plavac(マリ・プラヴァッツ)「小さなプラヴァッツ」の意。現地での省略形ダルマチア地方全域
Plavac(プラヴァッツ)単に「青い」を意味し、省略して使われることもダルマチア地方全域
Tribidrag × Dobričić F1(学術名)ジンファンデル(=ツリェナク)との交配であることを示す科学的表現

おわりに

プラヴァッツ・マリは、クロアチアの気候と風土をそのまま表現する力強い赤ワイン用ブドウ品種です。ジンファンデルの子孫でありながら、より骨太でスパイシー、熟成によって複雑さが増すこの品種は、世界のワインファンにとって新たな発見となるでしょう。

クロアチアワインの世界は、まだまだ知られていない魅力にあふれています。プラヴァッツ・マリをきっかけに、アドリア海に広がるテロワールと、その土地に根ざしたワイン文化に触れてみてはいかがでしょうか。

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この記事を書いた人

とある企業の会社員
突然ワインに目覚めて、その奥深さにハマる。
WSET Lv.3のほか、日本ソムリエ協会認定ワインエキスパート、チーズプロフェッショナル協会認定チーズプロフェッショナルも保有し、現在は、WSET Diploma(WSET ディプロマ)に挑戦中。
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