ピノ・グリ(Pinot Gris)│世界中で愛される芳醇な白ワインを生むグレーのピノ種

ピノ・グリ(Pinot Gris)│世界中で愛される芳醇な白ワインを生むグレーのピノ種
目次

1. 概要

ピノ・グリ(Pinot Gris)は、白ワイン用のブドウ品種でありながら、果皮が灰色がかったピンク色をしていることが大きな特徴です。ピノ・グリは、白ワインとしてはフルボディ寄りで芳醇な味わいを持ち、辛口から甘口まで幅広いスタイルのワインが造られています。

ピノ・グリは、ピノ・ノワールの突然変異種であり、同じピノ・ファミリーに属します。ピノ・ブランと同様に、果皮の色違いで分類される姉妹品種です。世界各国で栽培されており、その地域の気候や醸造スタイルによって、香りや味わいに多様性が生まれます。

2. 名前の由来

「ピノ・グリ(Pinot Gris)」という名称は、フランス語で「灰色のピノ」を意味しています。「ピノ」は松ぼっくり(Pinot)のような房の形に由来し、「グリ(Gris)」は果皮の色が灰色がかって見えることから名付けられました。

この品種は、地域によって異なる名前で呼ばれることが多く、特にイタリアでは「ピノ・グリージョ(Pinot Grigio)」、ドイツでは「グラウブルグンダー(Grauburgunder)」や「ルーレンダー(Ruländer)」と呼ばれます。これらの名称も果皮の色に由来しており、それぞれの地域のワインスタイルに強く影響を与えています。

3. 栽培

ピノ・グリは世界中で広く栽培されている品種ですが、気候条件や栽培技術によって品質に大きな差が生まれやすいブドウです。以下に主な栽培特性をまとめます。

  • 萌芽(budding):比較的早い。春先の霜に注意が必要です。
  • 成熟(ripening):早熟型。冷涼気候でも十分に熟すことが可能です。
  • 樹勢(vigour):中〜高。生育が旺盛になりやすいため、適切な剪定が求められます。
  • 収量(yield):高めだが、過剰収穫によって品質が落ちやすいため管理が重要です。
  • 病害への耐性:灰色かび病(Botrytis cinerea)やべと病にやや弱い傾向があります。
  • 適した土壌:石灰質土壌や火山性土壌、砂利混じりの水はけの良い土地との相性が良好です。

ピノ・グリは、冷涼な地域では繊細な酸味とミネラル感が、温暖な地域では厚みのある果実味とまろやかさが現れます。そのため、地域によって味わいに個性が出やすいのもこの品種の魅力です。

4. 味わい

ピノ・グリの味わいは、その産地や醸造法によって大きく異なります。以下は代表的な特徴です。

  • 香りの特徴:洋梨、黄リンゴ、桃、メロン、ライチ、白い花、蜂蜜、アーモンドなど。熟成するとスパイスやドライフルーツの香りが出ることもあります。
  • 酸味とボディ:アルザスなど冷涼産地では酸が高く、緊張感のある味わいに。一方、温暖な気候のイタリアでは酸は控えめで軽やかな飲み口になります。
  • スタイルの多様性:辛口のフレッシュな白ワインから、貴腐菌による甘口デザートワインまで、幅広いスタイルが存在します。

また、ピノ・グリは一部でオレンジワインにも使われることがあり、果皮のピンクがかった色素を抽出することで、ロゼに近い色調を持つこともあります。

5. 主な生産地

ピノ・グリは世界中で栽培されており、各国で異なるスタイルのワインが生産されています。以下は代表的な産地です。

フランス(アルザス)

アルザス地方は、ピノ・グリの原産地のひとつとされ、最も高品質なピノ・グリを生産する地域のひとつです。ここではリッチで厚みのある辛口や、ヴァンダンジュ・タルディヴ(遅摘み)やセレクション・ド・グラン・ノーブル(貴腐ワイン)といった甘口も造られます。

イタリア(フリウリ=ヴェネツィア・ジュリア、ヴェネト)

イタリアでは「ピノ・グリージョ」の名前で親しまれ、特に北部のフリウリやヴェネト州で大量生産されています。軽やかでフレッシュな辛口スタイルが中心で、カジュアルに楽しめるワインとして世界的に人気です。

ドイツ(バーデン、ファルツ)

ドイツでは「グラウブルグンダー」または「ルーレンダー」と呼ばれ、辛口の高品質ワインが造られます。特にグラウブルグンダーは、近年その品質の高さが評価され、国際的な存在感を増しています。

アメリカ(オレゴン、カリフォルニア)

アメリカでは、オレゴン州を中心に「ピノ・グリ」が栽培されており、バランスのとれた味わいが人気です。冷涼な気候のため、酸がしっかりと感じられるスタイルが多く見られます。

その他の地域

  • ニュージーランド:酸と果実味のバランスが良く、フルーティーで爽やかなスタイル。
  • オーストラリア:ヴィクトリア州などで品質の高いピノ・グリが生産されています。
  • ハンガリーやルーマニアなど東欧でも、古くからピノ・グリは栽培されてきました。

6. 代表的なシノニム

ピノ・グリは、栽培地域によってさまざまな名称(シノニム)で呼ばれています。以下に代表的な名称とその由来、生産地を表形式でご紹介します。

シノニム名名称の由来・背景主な生産地
Pinot Grigio(ピノ・グリージョ)イタリア語で「灰色のピノ」。軽やかでフルーティーな辛口が多い。イタリア(フリウリ、ヴェネト)
Grauburgunder(グラウブルグンダー)ドイツ語で「灰色のブルゴーニュ種」。辛口の高品質ワインに用いられる。ドイツ(バーデン、ファルツ)
Ruländer(ルーレンダー)18世紀のドイツの貿易商ヨハン・セグナー・ルーレンダーに由来。ドイツ、オーストリア
Tokay d’Alsace(トカイ・ダルザス)アルザス地方で過去に使用された呼称(現在は使用禁止)。フランス(アルザス、旧称)
Szürkebarát(スールケバラート)ハンガリー語で「灰色の修道士」の意味。ハンガリー
Pinot Beurot(ピノ・ブーロ)ブルゴーニュの古称。フランス(ブルゴーニュ、旧称)

おわりに

ピノ・グリは、その中庸で柔軟なキャラクターが世界中で愛されるブドウ品種です。軽快で爽やかなイタリアのピノ・グリージョから、重厚で熟成可能なアルザスのピノ・グリまで、その振れ幅は非常に広く、ワイン初心者から愛好家まで楽しめる品種となっています。

ぜひさまざまな産地のピノ・グリを飲み比べて、その香り、味わい、テクスチャーの違いを体感してみてください。料理とのペアリングもしやすく、日常の食卓にも彩りを与えてくれる万能な一本になるでしょう。

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この記事を書いた人

とある企業の会社員
突然ワインに目覚めて、その奥深さにハマる。
WSET Lv.3のほか、日本ソムリエ協会認定ワインエキスパート、チーズプロフェッショナル協会認定チーズプロフェッショナルも保有し、現在は、WSET Diploma(WSET ディプロマ)に挑戦中。
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