マロラクティック発酵(Malolactic Fermentation)│酸味を和らげてまろやかさを生むワイン造りの工程

マロラクティック発酵(Malolactic Fermentation)│酸味を和らげてまろやかさを生むワイン造りの工程
目次

マロラクティック発酵とは?

マロラクティック発酵(Malolactic Fermentation、略してMLF)とは、ワインの中のシャープなリンゴ酸を、より柔らかな乳酸に変化させるプロセスのことを指します。発酵と呼ばれていますが、実際には乳酸菌(Oenococcus oeniなど)による代謝反応です。

主に白ワインや赤ワインで用いられ、酸味をまろやかにし、口当たりをなめらかにする目的で行われます。

なぜマロラクティック発酵を行うのか?

ワインには自然に含まれるリンゴ酸(malic acid)という酸が存在しますが、これを乳酸菌によって乳酸(lactic acid)に変換することで、以下のような効果が得られます。

主な効果

  • 酸味が和らぎ、全体的にまろやかな味わいに
  • バターやクリームのような香り(ジアセチル由来)が生まれる
  • ワインの微生物的安定性が向上(リンゴ酸がなくなるため)
  • 口当たりがより豊かで丸みのある印象に

このプロセスは、特に酸が強すぎる地域のワインや、高級白ワインで多用されます。

マロラクティック発酵の仕組み

MLFは、一次発酵(アルコール発酵)が終了した後に行われることが一般的です。

基本の流れ:

  1. アルコール発酵後のワインに乳酸菌を添加
    • 自然発生することもありますが、多くはOenococcus oeniという乳酸菌を添加します。
  2. 適切な温度(18〜22℃)に保って菌を活性化
    • 酸素は不要で、嫌気的(酸素なし)環境で進行します。
  3. リンゴ酸が分解され、乳酸と二酸化炭素が生成
    • この反応により、酸味が穏やかに、風味がまろやかに変化します。
  4. 反応終了後、安定性を確認してSO₂(亜硫酸)で殺菌
    • 微生物リスクを避けるため、最後に保存安定性を確保します。

どのようなワインで行われているの?

白ワイン

  • シャルドネ(特にブルゴーニュやカリフォルニア)
    • バターやトーストのようなリッチな風味を生むため、MLFは欠かせません。
  • シュナン・ブラン、ヴィオニエなど
    • 果実味を生かしながら柔らかさを出すために部分的にMLFを行うことも。

赤ワイン

  • ピノ・ノワール、カベルネ・ソーヴィニヨン、メルローなど
    • 通常ほぼすべての赤ワインで実施。酸を落ち着かせ、滑らかさを出すためです。

マロラクティック発酵による風味の変化

変化前(リンゴ酸)変化後(乳酸)
酸味が強くシャープ酸味がまろやかで柔らかい
青リンゴや柑橘系の印象バターやクリームの印象
タイトで緊張感のある味わい丸みとコクのある味わい

特に白ワインにおいては、MLFの有無がワインスタイルに大きな影響を与えます

マロラクティック発酵を意図的に止めるケース

近年では「フレッシュでキリッとした酸味を生かしたスタイル」も人気があり、あえてMLFを行わないこともあります。

  • シャブリ(Chablis)などの冷涼産地のシャルドネ
  • グリューナー・ヴェルトリーナーやリースリングなどの酸が魅力の品種

その場合はSO₂の早期添加や低温管理により、乳酸菌の働きを抑えて発酵を防ぎます。

MLFに関するキーワード

  • ディアセチル(Diacetyl):MLFで生成される副産物。バターやクリームの香りを与えます。
  • Oenococcus oeni(オエノコッカス・オエニ):MLFを行う代表的な乳酸菌種。
  • 部分的MLF(Partial MLF):ワインの一部だけにMLFを行い、酸とまろやかさのバランスを取る手法。

まとめ:酸味のコントロールでワインの個性が決まる

マロラクティック発酵は、ワインの味わいや質感を大きく左右する重要なプロセスです。酸味を和らげ、まろやかでリッチなスタイルを目指す場合に欠かせません。

一方で、フレッシュでシャープなスタイルを好む生産者はMLFを避けるなど、ワインの方向性に応じた選択が求められる技術でもあります。

今後、ワインを選ぶ際に「MLFをしているかどうか」に注目すると、より深い楽しみ方ができるかもしれません。

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この記事を書いた人

とある企業の会社員
突然ワインに目覚めて、その奥深さにハマる。
WSET Lv.3のほか、日本ソムリエ協会認定ワインエキスパート、チーズプロフェッショナル協会認定チーズプロフェッショナルも保有し、現在は、WSET Diploma(WSET ディプロマ)に挑戦中。
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