「オンダラビ・スリ」はどんなタイプのワインになる?
- シーフード・ピンチョス好きのあなたへ:爽快で軽やかな辛口白ワイン
- 珍しい品種を探している方へ:国内では出会いにくい希少品種
- 産地比較をしたい方へ:ゲタリア/ビスカヤ/アラバ産地別の違いも解説
この記事を読めば、栽培習性・味の特徴・代表生産者・地域別の飲み比べ視点まで、1記事でしっかり理解できます。
概要
オンダラビ・スリ(Hondarrabi Zuri)は、スペイン・バスク地方を代表する白ワイン用ブドウ品種です。この品種から造られるワインは、チャコリ(Chacolí/Txakoli)という微発泡性の辛口白ワインに使われることで知られています。フレッシュで酸味が際立ち、アルコール度数が控えめで爽やかに楽しめるスタイルが特徴です。

ワイン愛好家の間では「海を感じさせるワイン」とも称され、近年ではその個性的な味わいと食事との相性の良さから、注目度が高まっています!
名前の由来
「オンダラビ・スリ(Hondarrabi Zuri)」は、バスク語に由来する名称であり、バスク地方の土着品種として古くからこの地で愛されてきました。
- Hondarrabi(オンダラビ):バスク地方の一部では「ブドウ」や「ワイン」を意味する古語とされ、また、スペイン・ギプスコア県の町「オンダリビア(Hondarribia)」に由来するとも言われています。
- Zuri(スリ):バスク語で「白い」を意味します。
つまり、「オンダラビ・スリ」は直訳すると「白いオンダラビ」、または「オンダリビアの白ブドウ」と解釈される名称です。なお、赤ブドウの「オンダラビ・ベルツァ(Hondarrabi Beltza)」の「ベルツァ」は「黒い(=赤い)」を意味します。



世界中でもなかなか見ないレアなブドウ品種であり、知っているだけで通の仲間入りのブドウ品種名です!
栽培
オンダラビ・スリ(Hondarrabi Zuri)は、バスク地方の海沿いの気候に非常によく適応した品種です。栽培面積は限定的ですが、気候変動の中でも安定した品質を保てる耐性の強い品種として注目されています。
- 萌芽(budding):やや早め。春の遅霜には注意が必要です。
- 成熟(ripening):比較的遅め。10月初旬から中旬にかけて収穫されます。
- 樹勢(vigour):中程度〜強め。過繁茂にならないように管理が必要です。
- 収量(yield):中〜高。成熟条件が良ければ安定した収穫が可能です。
- 病害抵抗性:うどんこ病や灰色かび病にはある程度の耐性があります。
- 気候適性:湿度の高い大西洋性気候に強く、塩分や風にも比較的耐性があります。
近年では、有機栽培や低介入型のワイン造りを目指す生産者たちが、オンダラビ・スリの持つテロワール表現力に注目し、積極的にこの品種を使用する傾向にあります。



バスク地方が大西洋に面していることもあり、塩分や湿気に強い品種でもあります。私が訪れた下記の写真のように、海を望むブドウ畑が非常に印象的です!




味わい
オンダラビ・スリのワインは、その高い酸味と繊細な果実味、そして海風を思わせるような塩味が大きな特徴です。アルコール度数は通常10〜11%と低く、爽やかで軽快な味わいが魅力です。
- 外観:淡いレモンイエロー。微発泡の場合は泡立ちも見られます。
- 香り:青リンゴ、グレープフルーツ、レモンピールなどの柑橘系果実に加え、海藻、塩、白い花、ハーブなどのニュアンスが感じられます。
- 味わい:非常にドライで、シャープな酸味が口の中を引き締めます。ミネラル感が強く、余韻はさっぱりしています。微発泡タイプは清涼感がさらに強調されます。
- 熟成:基本的には若飲み向きですが、一部の造り手は樽熟成やシュール・リー製法により、より複雑で骨格のあるスタイルを造っています。
- ペアリング:生ガキやマリネ、白身魚のグリル、タパス、バスクのチーズ(イディアサバルなど)との相性が抜群です。



アルコール度数が比較的低く、微発泡でもあるので、比較的どんな料理にも合わせることができます。美食の街サン・セバスティアンに訪れたときには、オンダラビ・スリで作ったチャコリを片手に、バル巡りをして、ピンチョスという一口おつまみを一緒に楽しみましょう!
主な生産地
オンダラビ・スリの生産は、主にスペイン北部のバスク地方に限定されています。特に以下の3つのDO(原産地呼称)で、チャコリの原料として使われています。
DO チャコリ・デ・ゲタリア/ゲタリアコ・チャコリーナ(Chacolí de Getaria/Getariako Txakolina)
バスク州ギプスコア県の大西洋沿岸部を中心とした産地で、オンダラビ・スリの最大の産地です。微発泡性の辛口スタイルが多く、冷やして飲むのが一般的です。伝統的に高い場所から注ぐスタイル(エスカンシア)も特徴的です。
DO チャコリ・デ・ビスカヤ/ビスカイコ・チャコリーナ(Chacolí de Vizcaya/Bizkaiko Txakolina)
ビルバオ周辺を中心とした地域で、ややフルーティなスタイルのワインが多い傾向にあります。近年では樽熟成やシュール・リー製法を採用する生産者も増えています。
DO チャコリ・デ・アラバ/アラバコ・チャコリーナ(Chacolí de Álava/Arabako Txakolina)
バスク内陸部のアラバ県に位置する産地で、最も新しいDOです。標高が高く、よりミネラル感の強いワインが造られています。
加えて、フランス側のバスク地域(イルレギー AOC)でも、オンダラビ・ズリは「イズキリオタ・ツリ(Izkiriota Zuri)」という名で栽培されることがあります。



なお、チャコリ・デ・ゲタリアはスペイン語、ゲタリアコ・チャコリーナは現地のバスク語です。私が訪れたサン・セバスティアンも、バスク地方のドノスティアという名称が併記されていることが多いですので、両方とも覚えてみましょう!
代表的なシノニム
オンダラビ・スリは、地域や言語によって異なる名前で呼ばれることがあります。以下に、代表的なシノニムを表にまとめました。
シノニム名 | 名称の由来・背景 | 主な生産地 |
---|---|---|
Ondarrabi Zuri(オンダラビ・スリ) | バスク語の一般的な綴り。DO規定に準じた正式名称。 | スペイン・バスク地方 |
Ondarabiya Zuri(オンダラビヤ・スリ) | スペイン語表記を意識した綴り。まれに見られる。 | スペイン(古い資料) |
Izkiriota Zuri(イスキリオタ・スリ) | フランス・バスク地方(イルレギー)での呼称。 | フランス・バスク地方 |
Courbu Blanc(クールブ・ブラン) | DNA鑑定により、一部はこのフランス品種と一致する可能性が指摘されている。 | 南西フランス |
なお、DNA分析によって、オンダラビ・ズリは複数の異なる品種が混在して使われている可能性があるとも言われており、クールブ・ブランや他の土着品種との識別には注意が必要です。



私は、オンダラビ・スリしか知りませんでしたが、こんなにもシノニムがあるとは驚きでした。
まとめ
オンダラビ・スリは、バスク地方ならではの気候風土と文化に育まれた希少な白ワイン用ブドウです。高い酸味と軽やかさは、暑い季節や魚介料理と抜群の相性を見せてくれます。
「地元の伝統 × 現代のワイン造り」が融合したこの品種は、今後もさらに注目を集めていくことでしょう。



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