シャトーヌフ・デュ・パプ(Châteauneuf-du-Pape)AOC│フランス・南ローヌで最も歴史あるワインを解説

シャトーヌフ・デュ・パプとはどんなワイン産地?

南フランスを旅するあなたへ:ローヌ地方の歴史あるワイン銘醸地を訪問
シャトーヌフ・デュ・パプの特徴を知りたい方へ:13品種による伝統と多様性を解説
訪問前の基本情報:初めて訪れる方や、訪れた方がこの地の魅力を思い出すために


この記事を読めば、シャトーヌフ・デュ・パプの歴史・ブドウ品種・醸造法・生産者情報まで、産地の魅力を1記事でしっかり理解できます。

シャトーヌフ・ドュ・パプ特有の小石
シャトーヌフ・ドュ・パプ特有のギャレと呼ばれる小石。こぶし大の大きさが特徴で驚きます。
目次

シャトーヌフ・デュ・パプAOCとは?

アヴィニョンの教皇庁
アヴィニョンにある教皇庁。その大きさに圧倒されます。

シャトーヌフ・デュ・パプ(Châteauneuf-du-Pape)は、フランス南部のローヌ渓谷地方に位置する、世界的に名高い赤ワインの産地です。1936年にフランス最古のAOC(原産地呼称)に認定され、重厚で複雑な味わいが多くのワイン愛好家に支持されています。

名前は「教皇の新しい城」を意味し、14世紀に教皇庁がアヴィニョンに移った際、当時の教皇がこの地に別荘を建てたことが由来です。その歴史的背景と地域の独特のテロワールが、シャトーヌフ・デュ・パプのワインに深みと格式を与えています。

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初代教皇と言われるペトロが天国の鍵を受け取ったと言われて以来、教皇を示すもの(アトリビュート)は「鍵」となっています。シャトーヌフ・ドュ・パプのワインボトルなどを見ると「鍵」が刻印されていることを確認してみるのも面白いですよ!

地理と気候

ローヌ川
アヴィニョンから望むローヌ川。ジュネーヴから流れがだんだん落ち着いてきているのが印象的でした。

シャトーヌフ・デュ・パプは、ローヌ川の南岸、アヴィニョンの東南約10kmに位置し、地中海に近い温暖な気候が特徴です。年間を通じて日照時間が長く、夏は暑く乾燥していますが、ミストラルという強い北西風がブドウの健全な生育を助けています。

このミストラルは湿気や病害を抑制し、健全なブドウを育てる重要な役割を果たしています。冬は比較的温暖で霜の被害も少なく、ブドウ栽培に理想的な環境といえます。

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私が訪れたときは、6月の30℃を超える気候でしたが、風が強く、乾燥していてとても気持ちよかったです。ミストラルを感じることもできましたが、暑い日にはとてもちょうどよく、地元の天気予報ではミストラル予報もしていました。

土壌の多様性とテロワール

シャトーヌフ・デュ・パプの大きな特徴は、複雑で多様な土壌です。主な土壌タイプには以下があります。

  • ギャレ石
     丸く滑らかな石で構成される表土は、太陽の熱を蓄えて夜間に放出し、ブドウの成熟を促進します。
  • 粘土質土壌
     水分保持力が高く、夏の乾燥を和らげます。
  • 砂利混じりの土壌
     排水性が良く根の発育を助けます。

この多様な土壌が、ブドウに複雑なミネラル感や風味の奥行きを与え、シャトーヌフ・デュ・パプ特有の豊かな味わいを生み出します。

また、シャトーヌフ・デュ・パプの畑は主に標高100~150mの丘陵地帯に広がり、地中海の強い日差しを浴びてブドウはよく熟します。土壌の多様性により、同じ畑内でも複数の品種を育てることが可能です。

多くの生産者が伝統的な手摘み収穫を行い、樹齢30年以上の古樹が多いことも特徴です。これにより、根が深く張り、土壌のミネラルを豊かに吸収し、ワインに複雑味をもたらしています。

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この記事の冒頭にギャレと呼ばれる丸い小石の写真を掲載しています。だいたいソフトボールくらいの大きさで、熱を帯びているのがとても印象的でした。ただ、全ての土壌がギャレであるわけでもなく、テロワールの多様性があると聞いております。

許可されたブドウ品種とブレンドの多様性

シャトーヌフ・デュ・パプでは、最大13品種のブドウがAOCの認可品種として認められています。これはフランスの赤ワイン産地でも最大級の多様性です。

主要品種

  • グルナッシュ(Grenache Noir)
     力強い果実味と柔らかいタンニンが特徴。全体の主要品種で、ワインにボリューム感を与えます。
  • シラー(Syrah)
     濃厚な色合いとスパイシーさを加え、構造を引き締めます。
  • ムールヴェードル(Mourvèdre)
     深い色調と強いタンニン、複雑なスパイスや動物的なニュアンスをもたらします。
  • クノワーズ(Cinsault)
     軽やかさや赤い果実の風味を補います。

その他の品種

  • ヴァカレーズ(Vaccarèse)
  • ブールブーラン(Bourboulenc)
  • クレレット(Clairette)
  • ロール(Roussanne)
  • テルーア(Terret Noir)
  • ピクプール(Picpoul)
  • ピカルド(Picardan)
  • グルナッシュ・ブラン(Grenache Blanc)

これらの品種を組み合わせることで、造り手は多様な味わいのワインを生み出しています。

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ソムリエやワインエキスパートの試験では、シャトーヌフ・ドュ・パプで認められている13種類のブドウ品種を正しく言えるかどうかが一つのハードルであるとよく話をしています笑


醸造の特徴

シャトーヌフ・デュ・パプのワインは、一般的にブレンドされて造られます。グルナッシュを主体に、シラーやムールヴェードルなどが適宜配合され、ボディと構造、香りの複雑さを追求しています。

醸造は伝統的な大樽発酵と熟成を行う生産者が多い一方で、ステンレスタンクを用いるなど近代的手法も取り入れています。熟成期間は生産者やスタイルによりますが、主にフレンチオーク樽で6ヶ月~18ヶ月程度行われます。

この熟成過程で、タンニンがまろやかになり、スパイシーさや土のニュアンス、ドライフルーツの香りが加わることで、複雑で深い味わいが形成されます。

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生産者の方にお聞きしてみると、実際にはグルナッシュ主体のブレンドが圧倒的に多く、13品種すべてを使う生産者は意外と少数派とのことでした。実際は、グルナッシュの特徴を中心に捉えることが重要かと思います。

味わいの特徴

シャトーヌフ・デュ・パプのワインは濃厚でパワフルなボディが特徴です。典型的には以下のような味わいが挙げられます。

  • 黒系果実(ブラックチェリー、ブラックベリー)
  • スパイス(胡椒、シナモン、クローブ)
  • ハーブ(ローズマリー、タイム、ラベンダー)
  • 土や石灰、革や煙草のニュアンス
  • 力強いタンニンとしっかりした酸味
  • 長く続く余韻

熟成によって複雑さが増し、トリュフや森の下草のような香りも感じられます。若いうちは果実味豊かでフルーティーですが、時間とともに円熟味が加わり、飲みごたえのあるワインに変化します。

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グラスを傾けた瞬間、ふわっと香るラベンダーと黒胡椒、そして南仏の乾いた土の匂い──まるでプロヴァンスの野原を歩いているような感覚です。若いヴィンテージは果実味が前面に出ますが、10年熟成したボトルでは、トリュフや下草、古書のような深い香りも現れます。まさに「ワインは時の芸術」。

代表的な生産者

シャトーヌフ・デュ・パプには多くの著名生産者がいますが、特に以下は世界的に評価が高い生産者です。

生産者名特徴公式サイト
ドメーヌ・ラ・ブティニエール(Domaine La Boutinière)100年以上にわたり、4代にわたって伝統を守りながらワイン造りhttps://www.domainelaboutiniere.fr/en/
シャトー・ド・ボーカステル(Château de Beaucastel)伝統的かつ高品質の代表格。多品種ブレンドの完成度が高い。https://cellardoorfinewine.jp/collections/chateau-de-beaucastel
シャトー・ラギューヌ(Château Rayas)軽やかでエレガントなスタイル。グルナッシュ主体。https://chateaurayas.fr/
ドメーヌ・デュ・ペゴー(Domaine du Pegau)力強くスパイシーな味わいで知られる。https://pegau.com/
KSK

私がツアーで訪れたドメーヌ・ラ・ブティニエールの記事のリンクもつけております。ぜひ御覧ください!!

まとめ

シャトーヌフ・デュ・パプは、その歴史と伝統、そして多様な土壌と品種によって生み出されるワインの多様性が魅力です。力強く複雑な味わいは、飲みごたえを求める方にぴったりで、世界中のワイン愛好家から愛されています。

KSK

多彩な品種のブレンドにより、毎年異なる表情を見せるため、ヴィンテージごとの比較やお気に入りの生産者を見つける楽しみもあります。
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この記事を書いた人

とある企業の会社員
突然ワインに目覚めて、その奥深さにハマる。
WSET Lv.3のほか、日本ソムリエ協会認定ワインエキスパート、チーズプロフェッショナル協会認定チーズプロフェッショナルも保有し、現在は、WSET Diploma(WSET ディプロマ)に挑戦中。
10カ国100箇所以上のワイン関連の自治体を巡った経験を基に、ワインの情報や勉強をもっと気軽にできるよう、世界のワインの情報を統合してお届けできるようサイトを運営していきます。

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