アルザス(Alsace) AOC|フランス最北の名産地、個性豊かな白ワインの世界を解説

アルザスの風景
ヴォージュ山脈を遠方に望む、アルザスのブドウ畑

アルザスワインの産地とはどんなところ?

フランス東部アルザス地方に旅行するあなたへ:魅力あふれるワイン産地の紹介
アルザスの特徴を知りたい方へ:多彩なブドウ品種と独自の醸造技術を解説
訪問前の基本情報:初めてアルザスを訪れる方や、訪れた方がワインの魅力を振り返るために

この記事を読めば、アルザスワインの魅力と産地の基本情報を1記事でしっかり理解できます。

目次

概要と特徴

アルザスAOC(Alsace)は、1962年に制定されたフランス北東部のワイン産地規格で、ボトルには品種名が明記されることが特徴です。ラベルに表示されたブドウは、ほとんどの場合100%その品種でなければなりません。

対象となるのは白ワイン(90%以上)、赤・ロゼワインも含まれますが、赤ではピノ・ノワールのみが単一品種認定される特色があります 。

また、AOCには村名(Communales)特定区画(Lieux‑Dits)表示が可能で、2011年には、甘口ワインなどの区分である、ヴァンダンジュ・タルディーブ(Vendanges Tardives, VT)セレクシオン・ド・グラン・ノーブル(Sélection de Grains Nobles, SGN)の表記制度がAOCとして整備されました。

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アルザスは、ストラスブールからコルマールまで非常に有名な観光地が含まれており、私も訪れたときは非常に感動しました!
ぜひ小さな村であるリボーヴィレやリクヴィルといった街まで訪れてみることをおすすめします。おとぎ話のような家ばかりで素晴らしいです。

地理・気候・テロワール

アルザスのヴォージュ山脈とワイン畑
アルザスのヴォージュ山脈とワイン畑。フェーン現象によりとても天気が良く気持ちよかったです。

アルザスは、ヴォージュ山脈の東側斜面に沿ってブドウ畑が展開しており、独特の地理的・気候的条件が高品質なワイン生産に貢献しています。

まず、アルザスの地理的特徴として、ヴォージュ山脈によるフェーン現象が挙げられます。この山脈が西からの湿った風を遮ることで、アルザス地方はフランスで最も降水量の少ない地域の一つとなっており、乾燥した気候がブドウの健全な成熟を助けます。さらに、年間日照時間も1,800時間を超え、ブドウがじっくりと熟すための理想的な条件が揃っています。

気候は大陸性気候に分類され、夏は温暖で乾燥、冬は寒冷です。このため、昼夜の寒暖差が大きく、アロマティックで酸のしっかりしたワインが生まれます。また、秋には朝霧が発生しやすく、貴腐菌の発生に適した環境もあるため、貴腐(セレクション・ド・グラン・ノーブル)の甘口ワインも造られます。

テロワールの多様性もアルザスの大きな魅力です。地質は花崗岩、石灰岩、粘土、シスト、砂岩など13種類以上の土壌がモザイク状に広がっており、同じ品種でも異なる畑で全く異なる個性を持つワインが生まれます。特に、ヴォージュ山脈の中腹(標高200〜400m)に位置するグラン・クリュの畑では、斜面と土壌、日照のバランスが秀逸で、アルザス屈指の高品質ワインが造られています。

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アルザス地域を訪れてみると、ヴォージュ山脈の中腹からの眺めの良さや、その天気の良さに圧倒されます。こうした気候の良さから作られるワインはそれは美味しいよなと思います。

ブドウ品種

アルザスはフランスの中でも特に白ワイン用のブドウ品種に特化した産地であり、その多くが単一品種でラベル表示されることが特徴です。

アルザスのブドウ品種は、大きく分けて「貴品種(Noble Grapes)」その他の品種に分類されます。

貴品種(Cépages Nobles)

  1. リースリング(Riesling)
     最も重要な品種の一つで、アルザスのテロワールを最も正確に反映する品種とされています。骨格のある酸とミネラル感、柑橘や白い花のアロマが特徴で、長期熟成にも耐えます。辛口スタイルが主流です。
  2. ゲヴュルツトラミネール(Gewurztraminer)
     ライチやバラ、スパイスを思わせる強い芳香を持ち、アルザスでもっともアロマティックな品種です。フルボディでアルコール度数も高く、糖分を残した半甘口や甘口スタイルでも人気があります。
  3. ピノ・グリ(Pinot Gris)
     以前は「トカイ・ピノ・グリ」とも呼ばれていました。熟した果実やスモーキーなニュアンス、厚みのあるボディが特徴で、辛口から貴腐ワインまで幅広いスタイルが可能です。
  4. ミュスカ(Muscat)
     特にミュスカ・オットネル(Muscat Ottonel)とミュスカ・ブラン・ア・プティ・グラン(Muscat Blanc à Petits Grains)が使われます。フレッシュで爽やかな辛口タイプが多く、マスカットそのものの香りが楽しめます。

その他の主要品種

  • シルヴァネール(Sylvaner)
     軽やかで爽快、繊細なスタイルのワインに仕上がります。一部のグラン・クリュ(ゾッツェンベルク)では使用が許可されています。
  • ピノ・ブラン(Pinot Blanc)
     まろやかで優しい果実味を持ち、早飲みタイプのテーブルワインや、クレマン・ダルザス(アルザスのスパークリングワイン)の主要品種としても活躍します。
  • オーセロワ(Auxerrois)
     ピノ・ブランとともに使われることが多く、ややふくよかで柔らかい酸が特徴です。単一品種表記されることは少ないですが、重要な脇役です。
  • ピノ・ノワール(Pinot Noir)
     アルザスで唯一の黒ブドウ品種。冷涼な気候で育つため、ライトボディの赤ワインやロゼに仕立てられますが、温暖化の影響で果実味のしっかりしたスタイルも増えています。

一部ではエデルツヴィッカー(Edelzwicker)と呼ばれる複数品種のブレンドワインも存在します。

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私は、最初ワインを学び始めたときは、アルザスのワインを好きでよく飲んでいました。それぞれ単一品種でブドウ品種の特徴を捉えることに役立つため、勉強にはとても役立つと思います!

アルザスのAOC規制

アルザス地方には現在、以下の3つの原産地呼称(AOC)が存在します。

AOC Alsace(アルザス)

もっとも広く使われているアペラシオンで、アルザスワインの約75%を占めます。基本的には単一品種表示がされるのが特徴で、ラベルに使用ブドウ品種が明記される数少ないAOCの一つです。

  • 許可品種:主にリースリング、ゲヴュルツトラミネール、ピノ・グリ、ミュスカ、ピノ・ブラン、シルヴァネール、オーセロワ、ピノ・ノワール。
  • 収量制限
     - 白ワイン:80hl/ha以下
     - 赤・ロゼ(ピノ・ノワール):60hl/ha以下
  • アルコール度数の最低基準
     - 一般白ワイン:9% vol
     - 貴品種の単一品種ワイン:10% vol(例:リースリング、ゲヴュルツ等)
  • 補糖(シャプタリザシオン):一定の条件下で許可されていますが、VTやSGNでは不可。

AOC Alsace Grand Cru(アルザス・グラン・クリュ)

1975年に最初のグラン・クリュ(シュロスベルク)が認定され、2007年には計51のグラン・クリュが登録されました。各クリュは独立したAOCと見なされ、それぞれ固有の地理的条件を持ちます。

  • 認定区画:51か所、合計面積約850ha。
  • 認可品種:原則として4貴品種(リースリング、ゲヴュルツトラミネール、ピノ・グリ、ミュスカ)。※ゾッツェンベルクではシルヴァネールも認可。
  • 収量制限
     - 55hl/ha以下(区画により異なる場合あり)
  • 最低熟度(天然糖度)
     - リースリングとミュスカ:最低168g/L
     - ピノ・グリとゲヴュルツ:最低193g/L
  • ラベル表示要件
     - 「Alsace Grand Cru」に加え、区画名(例:Rangen)と品種名の明記が義務。
  • ヴィンテージの表示:義務。

AOC Crémant d’Alsace(クレマン・ダルザス)

1976年に認定されたスパークリングワイン専用のAOC。瓶内二次発酵方式(伝統的方式)を採用しています。

  • 許可品種:ピノ・ブラン(主要品種)、ピノ・ノワール、ピノ・グリ、リースリング、シャルドネ(例外的に許可)。
  • 収量制限80hl/ha以下
  • 熟成期間:澱とともに最低9か月以上(多くの生産者は12か月以上)
  • 圧搾制限:100kgのブドウから最大67Lまでの果汁しか搾汁不可。
  • 補糖・補酸:認められているが、最終的なバランスに制限あり。
  • 発泡圧:最低4気圧以上

特殊表示(VT・SGN)

AOC AlsaceとGrand Cruでは、次のような特別表示が可能です:

  • Vendanges Tardives(ヴァンダンジュ・タルディヴ)
     遅摘みブドウから造られる高糖度ワイン。最低糖度は品種により異なり、リースリング・ミュスカ:235g/L、ピノ・グリ・ゲヴュルツ:257g/L
  • Sélection de Grains Nobles(セレクション・ド・グラン・ノーブル)
     貴腐菌により乾燥・凝縮したブドウ使用。リースリング・ミュスカ:276g/L、ピノ・グリ・ゲヴュルツ:306g/L
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アルザスのとあるワイナリーに訪問してお聞きしましたが、VTはラベルの表記で甘口か辛口かが分からないため注意が必要とことでした。
一回飲んで試してみないと甘さがわからないため、選ぶときは注意が必要かもしれません。

主要な生産者

アルザスを代表する生産者は以下のとおりです。

生産者名概要公式サイト
Cave de Ribeauvillé(カーヴ・ド・リボーヴィレ)1895年創設のフランス最古の協同組合ワイナリー。8つのグラン・クリュを含む広大な畑を所有し、有機農法への取り組みにも注力しています。https://www.vins-ribeauville.com/en/
Hugel(ヒューゲル)1639年創業の家族経営の名門。辛口から貴腐ワインまで、幅広いラインナップを展開し、アルザスの伝統を世界に発信しています。https://m.hugel.com/598DGMB3C4
Trimbach(トリンバック)1626年創業。Clos Ste. Hune(クロ・サント・ユーヌ)など、世界的に評価されるリースリングの名手。辛口スタイルを得意とします。https://www.trimbach.fr/en
Zind-Humbrecht(ツィント・ウンブレヒト)ビオディナミ農法を導入し、グラン・クリュに特化した高品質ワインを生産。VTやSGNのリリースも多く、国際的な評価が高いワイナリーです。https://www.zindhumbrecht.fr/en/
Domaine Weinbach(ドメーヌ・ヴァインバッハ)元修道院を拠点とした家族経営のワイナリー。リースリングやゲヴュルツトラミネールにおけるトップ生産者の一つです。https://www.domaineweinbach.com/fr/japonais
Domaine Marcel Deiss(ドメーヌ・マルセル・ダイス)フィールドブレンド(混植・混醸)を積極的に実践する革新的なドメーヌ。テロワール主義に基づいたワイン造りが特徴です。https://www.marceldeiss.com/en/
Josmeyer(ジョスモイヤー)1854年創業。サステナブルな栽培とアーティスティックなラベルデザインでも知られ、ピュアで繊細なスタイルのワインが魅力です。https://www.domaine-josmeyer.com/
Domaine Albert Mann(ドメーヌ・アルベール・マン)有機農法・ビオディナミ農法に基づいたワイン造りを行う家族経営のドメーヌ。アルザスの自然派代表格です。https://www.albertmann.com/
Domaine Bott-Geyl(ドメーヌ・ボット=ガイル)ビオロジックとビオディナミを取り入れ、リースリングを中心に力強くミネラル感あふれるワインを生み出しています。https://www.bott-geyl.com/
Dirler-Cadé(ディルレ・カデ)南部ベルクハイム村に本拠を構える家族経営ワイナリー。グラン・クリュに特化し、酸の美しいワインが特徴です。https://www.dirler-cade.com
Cave de Turckheim(カーヴ・ド・テュルクハイム)1955年創設の協同組合。グラン・クリュのBrandなどで高品質な白ワインを幅広く展開しています。https://www.cave-turckheim.com
Domaine Muré(ドメーヌ・ミュレ)1650年創業。Clos St. Landelinなど南アルザスのグラン・クリュに注力し、ビオディナミ栽培を実践。https://www.mure.com
Domaine Valentin Zusslin(ドメーヌ・ヴァランタン・チュスラン1691年創業の家族経営ドメーヌ。オーガニック・ビオディナミに傾倒し、フローラルで清澄な白が特徴。https://www.zusslin.com
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ワイナリーは小さな村にあることが多く、試飲が無料であることが多くて、非常に楽しいです!
私は、カーヴ・ド・リボーヴィレとヒューゲルなどに訪問させていただきましたが、無料で様々な品種を試飲してから購入することができたので、とても安心して購入できました。

まとめ

アルザスAOCは、品種個性とテロワールを素直に表現するエリアとして、辛口白を中心に広く愛されています。また、多様な品質帯(村名、Lieux‑Dits、Grands Crus)やVT・SGN、Crémantなどの多様性が楽しめるのも魅力です。

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アルザスの腫瘍品種であるリースリングの記事や、実際に訪問したカー・ヴ・ド・リボーヴィレやヒューゲルといったワイナリーの記事もまとめています。ぜひご覧ください!


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この記事を書いた人

とある企業の会社員
突然ワインに目覚めて、その奥深さにハマる。
WSET Lv.3のほか、日本ソムリエ協会認定ワインエキスパート、チーズプロフェッショナル協会認定チーズプロフェッショナルも保有し、現在は、WSET Diploma(WSET ディプロマ)に挑戦中。
10カ国100箇所以上のワイン関連の自治体を巡った経験を基に、ワインの情報や勉強をもっと気軽にできるよう、世界のワインの情報を統合してお届けできるようサイトを運営していきます。

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