コールドソーク(Cold Soak)│色と香りを引き出す低温浸漬の技術

コールドソーク(Cold Soak)│色と香りを引き出す低温浸漬の技術
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コールドソークとは?

コールドソーク(Cold Soak)とは、ブドウを破砕したあとに、アルコール発酵が始まる前の段階で、低温で果皮と果汁を浸漬する工程を指します。日本語では「低温浸漬」とも呼ばれます。

この工程は主に赤ワインやオレンジワインの色素や香り成分、柔らかいタンニンを引き出すために用いられ、発酵の前に行うことで、より繊細で複雑なアロマと味わいを実現します。

コールドソークの目的と効果

低温浸漬は、温度を5~15℃程度に保ちながら、通常1〜5日間ほど果皮と果汁を接触させます。この工程によって、以下のような効果が期待されます。

  • 鮮やかな色素の抽出(特にアントシアニン)
  • フレッシュな果実香や花のようなアロマの強調
  • 渋み(タンニン)の抽出を抑制し、口当たりを滑らかに
  • 果皮からのポリフェノールや風味成分の穏やかな抽出

つまり、ワインに華やかさ、滑らかさ、バランスの良さを与えるための工程です。

どのように行うの?

コールドソークは、以下のような手順で行われます:

  1. 収穫後のブドウを破砕・除梗
    • 果汁と果皮、種子を一緒にタンクに入れます。
  2. 温度を5〜15℃程度に管理
    • 酵母の働きを止めるため、冷却ジャケット付きタンクやドライアイス、冷水などを用いて冷却します。
  3. 数日間、果皮と果汁を浸漬
    • 酵母添加はせず、発酵を始めないよう注意しながら色やアロマを抽出します。
  4. 設定期間が終わったら、温度を上げて酵母を添加
    • 通常のアルコール発酵へ移行します。

どんなワインで使われている?

コールドソークは、特に繊細でアロマティックなワインを目指す場合に効果的で、以下のようなスタイルで用いられることが多いです:

  • ピノ・ノワール(Pinot Noir):果実味と香りの美しさを引き出すために頻繁に使用されます。
  • メルロー(Merlot)やグルナッシュ(Grenache):タンニンを抑えつつ、果実味を引き立てる目的で用いられます。
  • オレンジワインやスキンコンタクトの白ワイン:白ブドウの果皮から香りや色を引き出す手段として採用されることもあります。

コールドソークのメリット・デメリット

メリットデメリット
アロマや色のバランスを高められる温度管理にコストと技術が必要
タンニンが穏やかになり、口当たりが滑らかになる酵母管理を誤ると望まない発酵が始まるリスク
熟成ポテンシャルのある繊細なワインに仕上がるワインのスタイルがやや軽めになることがある

コールドソークとマセラシオン・カルボニックの違い

両者とも発酵前の工程で用いられますが、目的と仕組みは異なります。

比較項目コールドソークマセラシオン・カルボニック
使用タイミング発酵前、低温で果皮と果汁を接触発酵前、二酸化炭素下で房ごと細胞内発酵
主な対象ピノ・ノワール、メルローなどガメイ、ピノ・ノワールなど軽やかな品種
主な目的アロマと色素の穏やかな抽出果実味と香りの強調、タンニン抑制
酵母の働き発酵を防ぐ(低温管理)酵母を使わず細胞内で発酵(CO₂環境

コールドソークを採用するワイナリーの例

  • Domaine de la Romanée-Conti(ロマネ・コンティ)
    • 繊細で複雑なピノ・ノワールの醸造において、一部の年で低温浸漬を導入。
  • Rochioli Vineyards(ロキオリ・ヴィンヤーズ/米・ソノマ)
    • 高品質なピノ・ノワールで知られ、果実味と香りのバランスを重視して低温浸漬を実施。
  • Ata Rangi(アタ・ランギ/NZ・マーティンボロ)
    • ニュージーランドを代表するピノ・ノワール生産者で、丁寧な浸漬管理が特徴。

まとめ:コールドソークは繊細さとエレガンスを引き出す鍵

コールドソークは、繊細な香りや美しい色合い、滑らかなタンニンを引き出すための重要な工程です。特にピノ・ノワールなど、香りやバランスが重要なワインスタイルにおいて、その効果は非常に大きいといえます。

温度管理や衛生管理などに細心の注意を払う必要がありますが、そのぶん得られる品質の向上も大きく、高品質ワインを目指す生産者にとって欠かせない技術の一つとなっています。

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この記事を書いた人

とある企業の会社員
突然ワインに目覚めて、その奥深さにハマる。
WSET Lv.3のほか、日本ソムリエ協会認定ワインエキスパート、チーズプロフェッショナル協会認定チーズプロフェッショナルも保有し、現在は、WSET Diploma(WSET ディプロマ)に挑戦中。
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