マセラシオン・カルボニック(Macération Carbonique)│フレッシュな果実味を生む特別な醸造法

マセラシオン・カルボニック(Macération Carbonique)│フレッシュな果実味を生む特別な醸造法
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マセラシオン・カルボニックとは?

マセラシオン・カルボニック(Macération Carbonique)とは、ブドウを破砕せず、房ごと密閉タンクに入れ、二酸化炭素(CO₂)を充満させて行う特殊な醸造法です。

この方法では、通常の発酵とは異なり、ブドウの果実内で細胞レベルの発酵(細胞内発酵)が起こるのが特徴です。これにより、非常にフルーティーで軽やかな赤ワインが造られます。

どんなワインができるの?

マセラシオン・カルボニックで造られたワインは、次のような特徴を持ちます:

  • イチゴやバナナ、キャンディのような甘く華やかな香り
  • タンニンが少なく非常にまろやか
  • アルコール度数は控えめで飲みやすいスタイル
  • 若いうちに飲むのに適したライトボディの赤ワイン

代表例は、毎年11月に解禁されるボジョレー・ヌーヴォー(Beaujolais Nouveau)です。

マセラシオン・カルボニックの仕組みと手順

1.ブドウを除梗・破砕せず房のまま使用

通常の赤ワインは除梗・破砕してから発酵を始めますが、マセラシオン・カルボニックでは房全体(whole bunch)をそのまま使用します。

2.密閉タンクに二酸化炭素を充填

ステンレスタンクやコンクリートタンク内にブドウを入れ、酸素を排除した状態でCO₂を充満させます。

3.細胞内発酵(Intracellular Fermentation)

ブドウの細胞内で酵素が働き、酸素がない状態でもアルコールが生成される発酵が始まります。この発酵により、**アントシアニンやエステル(香気成分)**が内部から抽出されます。

4.約1週間後、破砕と通常の発酵へ移行

細胞内発酵を終えた後、ブドウを破砕し、通常のアルコール発酵(酵母による)を行って仕上げます

セミ・カルボニックとの違い

実際の醸造現場では、「セミ・カルボニック・マセラシオン(Semi-Carbonic Maceration)」という手法が多く用いられます。

比較項目マセラシオン・カルボニックセミ・カルボニック・マセラシオン
二酸化炭素の供給方法外部から人工的に供給自然に発酵で発生したCO₂を利用
酵母の使用発酵の後半で添加することが多い自然発酵で酵母がすぐに働き始める
使用例実験的ワイン、高級ワインでも採用ありボジョレー・ヌーヴォーが代表例

どんな品種に向いている?

マセラシオン・カルボニックに適した品種は、果皮が薄く、酸味が穏やかで、アロマティックな赤ワイン用ブドウです。

  • ガメイ(Gamay):ボジョレーで定番。果実味が際立つ。
  • ピノ・ノワール(Pinot Noir):軽やかで繊細な味わいを生む。
  • チレノワール(Cinsault):南仏で軽やかなワインに使われる。
  • グルナッシュ(Grenache):果実味豊かで、炭酸浸漬に向く。

メリットとデメリット

メリットデメリット
鮮やかな果実味と香りが引き出せる長期熟成には向かない
タンニンが少なく飲みやすい構造が軽く、複雑さに欠ける場合がある
短期間で出荷できる特殊な設備と管理が必要
独自のスタイルがマーケティングに使えるワイン愛好家から“軽すぎる”と評価されることも

よくある誤解

  • 白ワインやロゼには使えない?
    → 実際には一部のオレンジワインやロゼでも応用されることがありますが、主に赤ワインの軽やかなスタイルを造る技術です。
  • 人工的な味になるのでは?
    → 抽出方法が穏やかなだけで、自然酵母や無添加での実践例も多く、ナチュラルワインでも用いられています。

まとめ:マセラシオン・カルボニックはフレッシュさを極める技術

マセラシオン・カルボニックは、若々しくフルーティーで親しみやすい赤ワインを造るための画期的な醸造法です。果皮や種子からの過度なタンニン抽出を避けながら、アロマや色を穏やかに引き出す技術として、小規模生産者から大規模ブランドまで幅広く活用されています。

ボジョレー・ヌーヴォーをはじめ、カジュアルなワインからナチュラルワインまで、この手法がもたらす個性はますます注目されています。

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この記事を書いた人

とある企業の会社員
突然ワインに目覚めて、その奥深さにハマる。
WSET Lv.3のほか、日本ソムリエ協会認定ワインエキスパート、チーズプロフェッショナル協会認定チーズプロフェッショナルも保有し、現在は、WSET Diploma(WSET ディプロマ)に挑戦中。
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