トレッビアーノ(Trebbiano)│世界で最も栽培される白ブドウ品種のひとつ

トレッビアーノ(Trebbiano)│世界で最も栽培される白ブドウ品種のひとつ
目次

1. 概要

トレッビアーノ(Trebbiano)は、主にイタリアで栽培されている白ワイン用ブドウ品種で、世界的にも栽培面積が非常に広いことで知られています。生産量が多く、酸が高くて爽やかな味わいを持つこの品種は、単体ワインとしてだけでなく、ブレンド用、ブランデー(特にフランスのコニャックやアルマニャック)用原料としても広く使用されています。

イタリア国内では「トレッビアーノ」という名称で知られていますが、地域によって細かな亜種が存在し、それぞれ異なる名前で呼ばれています。中でも最も有名なのは「トレッビアーノ・トスカーノ(Trebbiano Toscano)」です。

安定した収量と高い酸を持つため、テーブルワインからスティルワイン、スパークリングワインまで、幅広いスタイルで利用されており、飲みやすさと清涼感が特徴の品種です。

2. 名前の由来

「トレッビアーノ」という名前の由来には諸説ありますが、最も有力とされているのは、中部イタリアのエミリア=ロマーニャ州を流れる「トレッビア川(Trebia)」にちなんで名付けられたという説です。この地域で古くから栽培されていた白ブドウが、やがて「トレッビアーノ」と呼ばれるようになったと考えられています。

一方で、古代ローマ時代の文献に記録されている「Vinum Trebulanum(トレブルムのワイン)」との関連性を指摘する説もあり、その起源は非常に古く、ローマ時代にまでさかのぼるとも言われています。

3. 栽培

トレッビアーノは非常に強健で適応力が高く、様々な気候条件や土壌で栽培することが可能です。特にイタリアの中南部を中心に栽培されていますが、フランス、オーストラリア、南アメリカなどでも栽培されており、グローバルな展開を見せています。

栽培特性

  • 萌芽(budding):早め
  • 成熟(ripening):中〜遅め
  • 樹勢(vigour):非常に高く、剪定や管理が必要
  • 収量(yield):非常に多産
  • 耐病性:灰カビ病やうどんこ病にやや弱いが、全体的には丈夫
  • 適地:肥沃な土地を好むが、品質重視の場合は排水の良い土地が望ましい

収量が高すぎる場合、果実の風味が薄くなりがちなので、品質重視のワイン造りでは収量制限が鍵を握ります。

4. 味わい

トレッビアーノから造られるワインは、一般的に軽やかでフレッシュ、酸味が高く、果実味は穏やかです。香りは控えめで、ワイン単体よりも料理との相性の良さが評価されることが多い品種です。

一般的な味わいの特徴

  • 色調:淡いレモンイエロー
  • 香り:青リンゴ、柑橘、白い花、ハーブ、時にアーモンドやミネラル感
  • 味わい:爽やかでドライ、やや軽めのボディ、しっかりとした酸
  • 熟成:基本的には若飲み向け。酸を活かしてスパークリングにも適性あり

品質が高く酸のしっかりしたトレッビアーノは、スパークリングやオレンジワイン、あるいは酸化熟成を活かしたスタイルにも応用されています。

5. 主な生産地

イタリア

トレッビアーノはイタリア全土で広く栽培されています。特に以下の地域で知られています。

  • トスカーナ州
    「トレッビアーノ・トスカーノ」はこの地の主要品種の一つで、さまざまなDOPワインにブレンドされています。キアンティなどの赤ワインにもかつては補助品種として使われていました。
  • エミリア=ロマーニャ州、ウンブリア州、マルケ州
    白ワインとしての単一品種ワインも多く生産されています。特にマルケ州ではヴェルディッキオとブレンドされることもあります。
  • アブルッツォ州、プーリア州
    高収量を活かして日常消費向けのワインが多く造られています。

フランス

  • **ユニ・ブラン(Ugni Blanc)**として、主に南西部やコニャック地方で栽培されており、ブランデー(コニャック、アルマニャック)用の主要品種です。

その他の国

  • オーストラリア:主にブレンド用や安価なワイン向けに使用されます。
  • アルゼンチン、ウルグアイ:イタリア移民によって持ち込まれた。
  • アメリカ(カリフォルニア):量産型白ワインに利用。

6. 代表的なシノニム

トレッビアーノはその栽培範囲の広さから、非常に多くのシノニム(別名)を持っています。以下は代表的なシノニムとその情報です。

シノニム名名称の由来・背景主な生産地
Ugni Blanc(ユニ・ブラン)フランス名。主にコニャック・アルマニャック用フランス(コニャック地方)
Trebbiano Toscano(トスカーノ)トスカーナ起源とされる亜種トスカーナ、ウンブリアなど
Procanico(プロカニコ)ウンブリア地方での呼称ウンブリア、ラツィオなど
White Hermitage(ホワイト・エルミタージュ)アメリカでの古い呼称アメリカ(カリフォルニア)
St. Émilion(サン・テミリオン)ブランデー用としての別称(仏)フランス南西部
Rossola(ロッソラ)北イタリアでのローカル名エミリア=ロマーニャなど

おわりに

トレッビアーノは、安定した栽培力と高い酸によって、世界中のワイン生産者に重宝されているブドウ品種です。その中立的な味わいは、料理との相性の良さを引き出し、日常の食卓をさりげなく彩ってくれます。

一見地味に思えるかもしれませんが、丁寧に造られたトレッビアーノは、そのポテンシャルを大いに発揮し、清涼感と繊細さを併せ持つワインに仕上がります。イタリアワインの奥深さを知るうえで、ぜひ一度は味わってみていただきたい品種です。

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この記事を書いた人

とある企業の会社員
突然ワインに目覚めて、その奥深さにハマる。
WSET Lv.3のほか、日本ソムリエ協会認定ワインエキスパート、チーズプロフェッショナル協会認定チーズプロフェッショナルも保有し、現在は、WSET Diploma(WSET ディプロマ)に挑戦中。
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