チャレッロ(Xarel·lo)│スペインの伝統と革新を支える白ブドウ品種

チャレッロ(Xarel·lo)│スペインの伝統と革新を支える白ブドウ品種
目次

1. 概要

チャレッロ(Xarel·lo)は、スペイン・カタルーニャ地方を代表する白ブドウ品種で、特にスパークリングワイン「カヴァ(Cava)」の主要品種として広く知られています。パレリャーダ、マカベオとともに「カヴァ三兄弟」とも称されるほど、カヴァに欠かせない存在です。

チャレッロは、単なる補助品種ではなく、実はカヴァの骨格や個性を支える主軸となるブドウです。特に酸の高さとフェノールの豊富さが特徴で、フレッシュな味わいだけでなく、熟成にも耐える構造を備えています。

近年では、単一品種でのスティルワインや、高品質なカヴァの基盤として、チャレッロへの注目が高まっており、スペイン国内外でその価値が再評価されています。

2. 名前の由来

「チャレッロ(Xarel·lo)」という名称は、カタルーニャ語に由来し、スペイン語では「シャレロ」と発音されることもあります。名称の正しいつづりには中央に「·(インタポイント)」が入り、「Xarel·lo」と記されるのが正式です。

その語源については諸説ありますが、古くから地中海沿岸部で栽培されていた在来品種のひとつであり、地方に根ざした呼び名がそのまま現代まで受け継がれていると考えられています。

3. 栽培

チャレッロは、暑く乾燥した気候に強く、土壌の貧しい地域でもしっかりとした果実を実らせる力強い品種です。耐病性や酸保持能力にも優れており、スペインの気候に非常に適したブドウといえます。

  • 萌芽(budding):中庸〜やや早めで、遅霜の影響は比較的少ない品種です。
  • 成熟(ripening):早熟〜中庸。収穫はマカベオよりやや早く、酸を保ったまま熟度に達します。
  • 樹勢(vigour):中〜やや強めの樹勢があり、適度な剪定や管理が必要です。
  • 収量(yield):中〜高収量で安定した生産が可能。過剰収穫に注意することで品質を保てます。
  • 耐病性:うどんこ病や灰色かび病への耐性が高く、病害に強い特性があります。
  • 適した土壌・気候:石灰質土壌、粘土質、砂質土壌のいずれにも適応可能で、乾燥にも強いです。

4. 味わい

チャレッロのワインは、しっかりとした酸と果実味を持ち、構造的にもしっかりとしています。スパークリングワインだけでなく、単一品種のスティルワインとしても魅力的な特徴を備えています。

  • 外観:淡いレモン色〜わずかに緑がかった輝きのある色調。熟成により黄金色に変化します。
  • 香り:レモン、グレープフルーツ、青リンゴ、洋梨などの爽やかな果実香。熟成タイプでは、ナッツやパンの皮、はちみつ、スモーキーなニュアンスが現れます。
  • 味わい:高めの酸とボディを備え、力強くストラクチャーのある味わい。後味には心地よいミネラル感と苦味を感じることもあります。
  • 熟成適性:酸がしっかりしているため、瓶内熟成やオーク樽熟成によるポテンシャルも高く、上級キュヴェでは10年以上熟成させるものも存在します。
  • ペアリング:貝類や白身魚、イカのフリット、山羊のチーズ、鶏肉のグリルなどと相性が良いです。

5. 主な生産地

チャレッロは主にスペイン・カタルーニャ地方で栽培されていますが、近年ではその高い品質が認められ、他地域や他国でも小規模に栽培され始めています。

スペイン

  • カタルーニャ地方(Catalunya/カタルーニャ)
     スペインにおけるチャレッロの中心的生産地。特にペネデス(Penedès/ペネデス)地方での栽培が盛んです。カヴァ用のスパークリングワインだけでなく、高品質のスティルワインも多数生産されています。
  • DO Penedès(ペネデス)
     単一品種のチャレッロワインや、ナチュラルワイン、生物多様性を重視したビオディナミ農法による栽培が進んでいます。先進的な生産者による革新的なスタイルが注目されています。

その他の地域

  • DO Costers del Segre(コステルス・デル・セグレ)
     内陸部で気温差の大きい気候を活かし、果実味と酸のバランスが取れたワインが造られています。
  • DO Conca de Barberà(コンカ・デ・バルベラ)
     少量ながら伝統的なチャレッロの栽培が残っており、オーガニック生産も増えています。

6. 代表的なシノニム

チャレッロは地方や文献によって異なる呼び名で記載されることがあります。以下に、確認されている主要なシノニムを表形式でご紹介します。

シノニム名名称の由来・背景主な生産地
Xarel·lo(チャレッロ)正式なカタルーニャ語での表記。カタルーニャ(スペイン)
Xarello(シャレロ)英語圏や非カタルーニャ語表記での一般的つづり。スペイン全土(表記揺れ)
Pansa Blanca(パンザ・ブランカ)DOアレリャ(Alella/アレリャ)で使われる別名。アレリャ(カタルーニャ)
Cartoixà(カルトシャ)一部の生産者が使用する古い呼称。バレンシア地方など
Moll(モル)バレアレス諸島で使われる別名。ただし混同例も多いため注意。マヨルカ島など(スペイン)

おわりに

チャレッロは、スペインの伝統的なスパークリングワイン文化を支える一方で、近年では単一品種としての可能性も高く評価されている白ブドウ品種です。高い酸と構造、複雑味を併せ持ち、さまざまなスタイルに対応できるその柔軟性は、世界のワイン愛好家や生産者にとって魅力的な存在となっています。

スペインワインをさらに深く知るうえで、チャレッロを試してみることは間違いなく価値ある一歩です。カヴァの華やかさの裏にあるこの品種の個性を、ぜひご自身の舌で感じてみてください。

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この記事を書いた人

とある企業の会社員
突然ワインに目覚めて、その奥深さにハマる。
WSET Lv.3のほか、日本ソムリエ協会認定ワインエキスパート、チーズプロフェッショナル協会認定チーズプロフェッショナルも保有し、現在は、WSET Diploma(WSET ディプロマ)に挑戦中。
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