1. 概要
パレリャーダ(Parellada)は、スペイン・カタルーニャ地方で主に栽培されている白ブドウ品種で、スパークリングワイン「カヴァ(Cava)」の主要な構成品種のひとつです。マカベオ、チャレッロとともに「カヴァ三兄弟」として知られ、伝統的なカヴァのスタイルを形作る重要な役割を担っています。
パレリャーダは、繊細な香りと爽やかな酸味をもたらす品種で、ワインにエレガントさやフレッシュさを与えるのが特徴です。単一品種で用いられることは少ないものの、ブレンドにおいて他の品種を引き立て、バランスを整える役割を果たしています。
2. 名前の由来
「パレリャーダ(Parellada)」という名称は、スペイン語やカタルーニャ語で「均整の取れた」や「調和のとれた」といった意味をもつ「parellat」に由来するという説があります。これは、パレリャーダの持つバランスの良い酸と香り、フレッシュな風味に由来すると考えられています。
地域や文献によっては、別名やシノニムが用いられることもありますが、現在では「Parellada」という呼称が最も一般的です。
3. 栽培
パレリャーダは、比較的冷涼な気候を好むブドウ品種で、高地での栽培が最適とされています。暑すぎる地域では酸が失われやすいため、標高500〜800メートルの畑が適地とされており、ペネデス地方北部の山間部などが代表的な栽培地です。
- 萌芽(budding):やや遅めで、遅霜のリスクをある程度回避できます。
- 成熟(ripening):遅熟品種で、収穫は9月後半〜10月初旬に行われることが多いです。
- 樹勢(vigour):中程度で、管理しやすいブドウ樹として知られています。
- 収量(yield):適切に管理すれば中程度の安定した収量が得られます。
- 耐病性:うどんこ病やベト病にはある程度耐性がある一方、灰色かび病には注意が必要です。
- 適した土壌・気候:石灰質土壌、砂質土壌に適しており、冷涼な高地が理想的です。
4. 味わい
パレリャーダから造られるワインは、繊細で軽快な味わいが魅力です。華やかというよりは、上品で穏やかな香味を備えており、ブレンドにおいて他の品種の個性を引き立てながら、全体に優雅なタッチを加えます。
- 外観:淡いレモン色で、若いうちは透明感があります。熟成によってゴールドがかった色調に変化することもあります。
- 香り:グリーンアップル、白い花、洋梨、柑橘類の皮のような爽やかなアロマが中心です。樽発酵を施すと、ヘーゼルナッツや焼きたてのパンの香りが加わります。
- 味わい:軽やかでフレッシュな酸を持ち、アルコール度数も控えめ。余韻は短めで、清涼感のある仕上がりです。
- 熟成適性:基本的には若飲みタイプが主流ですが、樽熟や瓶内熟成によって一定の発展を見せることもあります。
- ペアリング:生ハム、フリット、白身魚のグリル、野菜の前菜などと相性が良く、食中酒としても優秀です。
5. 主な生産地
パレリャーダは、スペイン国内の栽培面積ではさほど多くないものの、カヴァの産地を中心に重要な役割を果たしています。特にカタルーニャ地方の高地に多く見られます。
スペイン
- カタルーニャ(Catalunya/カタルーニャ)
カヴァの本拠地であるペネデス地方を中心に栽培され、高地で育てられたパレリャーダは、ワインに高い酸と繊細さをもたらします。 - DO Cava(カヴァ)
スパークリングワイン用として最も広く使われており、軽やかな香りと酸味で、ブレンドの中でも重要な役割を果たします。 - DO Penedès(ペネデス)
スティルワインとしての使用も見られ、一部の高品質ワインには単一品種で用いられることもあります。
その他の地域
- バレンシア地方やナバーラ地方にも一部植えられていますが、カヴァの中心地ほどの栽培量はありません。
6. 代表的なシノニム
パレリャーダは、主にカタルーニャ地方を中心に使われてきたため、地域によってさまざまな名称でも呼ばれてきました。以下は、文献や地元で確認されている主要なシノニムの一覧です。
シノニム名 | 名称の由来・背景 | 主な生産地 |
---|---|---|
Parellada(パレリャーダ) | もっとも広く使われる正式名称。カタルーニャ語由来。 | カタルーニャ(スペイン) |
Montonec(モントネック) | 古い文献や地元で使われる伝統的な別名。現在はあまり使われない。 | ペネデス、コンカ・デ・バルベラなど |
Martorella(マルトレージャ) | カタルーニャ地方の一部で見られるシノニム。混同例もあるため注意が必要。 | カタルーニャの一部 |
おわりに
パレリャーダは、カヴァに繊細さと爽やかさをもたらす白ブドウ品種として、長年にわたりスペインのスパークリングワイン文化を支えてきました。目立つ存在ではありませんが、その上品で控えめなキャラクターは、ワイン全体の調和を保つうえで非常に重要です。
最近では、高品質な単一品種ワインへの取り組みも見られ、パレリャーダのポテンシャルが徐々に再評価されています。スペインワインに興味がある方、特にカヴァの繊細な味わいを深く知りたい方にとって、パレリャーダはぜひ覚えておきたい品種のひとつです。
コメント