ドメーヌ・マルセル・ダイス(Domaine Marcel Deiss)│フランス・アルザスワインの革命児を解説!

ドメーヌ・マルセル・ダイス(Domaine Marcel Deiss)│フランス・アルザスワインの革命児を解説!

アルザスの革命的な生産者ドメーヌ・マルセル・ダイス(Domaine Marcel Deiss)はどんなワイナリー?

アルザス地方リボーヴィレに旅行するあなたへ:フランスアルザスの特筆するワイナリーを訪問
マルセル・ダイスの特徴を知りたい方へ:グラン・クリュを含む多彩なテロワールとコンプランテーションを解説
訪問前の基本情報:初めて訪れる方や、訪問経験のある方がその魅力を振り返るために


この記事を読めば、アルザスワインの革新を体現する生産者マルセル・ダイスの基本情報を1記事でしっかり理解できます。

Photo by World Wine With(筆者撮影)
マルセル・ダイスのブドウ畑の一つがあるリボーヴィレの町並み
目次

基本情報

Photo by World Wine With(筆者撮影)
2021年のリースリング。凝縮感が強くて非常に驚きました。

ドメーヌ・マルセル・ダイス(Domaine Marcel Deiss)は、1744年にブドウ栽培を始めた、フランス・アルザス地方ベルグハイム村に拠点を置く家族経営ワイナリーです。伝統的な単一品種ワイン(モノセパージュ)から、複数品種を共栽培・共醸造する“コンプランテーション(畑ミックス)”へと大胆に舵を切り、畑とテロワールの多様性を最大限に表現するスタイルで知られています。オーガニック農法を経て1998年よりビオディナミを導入し、ジャン=ミシェル・ダイスが率いる改革によって、アルザスの革新者として大きな地位を確立しています。現在は、息子マティユーとともにブドウ栽培とワイン醸造を行っています。

ワイナリーはベルグハイム村とリボヴィレ周辺に約26〜32ヘクタールを所有し、クリュ(1級・グラン・クリュ)、村、そしてアルザスAOCの多様な畑を管理。そのうち複数のクリュでは「コンプランテーション方式」で栽培を行い、畑ごとの個性を重視しています。

公式サイト:https://www.marceldeiss.com/en/

KSK

マルセル・ダイスはアルザスでも異色のドメーヌであると評判です。しかし、アルザスワインとしてそのレベルの高さはダントツであると個人的には思っております。

栽培の特徴:多品種共栽培が生むテロワール表現

ジャン=ミシェル・ダイスが最も大切にしているのは“畑を表現するワイン造り”。その核心が、複数品種を混植し、同時期に同じ畑から収穫・発酵する“コンプランテーション方式”です。

これは、ピノ・ブラン、ピノ・グリ、リースリング、ゲヴュルツトラミネール、ミュスカ、シルヴァネールなど、アルザスで認められた9〜13品種を一つの区画に混植し、同じ条件下で育てる手法です。この方法は遅咲き・早熟品種を含む多様な品種が自然なバランスで共生し、低収量ながら凝縮した果実味とテロワールの個性を強く反映します。

また1998年からビオディナミ農法を正式に導入し、以来、化学肥料や農薬を排除した自然農法によって、土壌と植物の健康を尊重し、よりテロワールに忠実なブドウに仕上げています。

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ソムリエやワインエキスパート試験では、アルザスのワインは同一品種でのワインがほとんどとされていますが、こうした今プランテーションでの混植は非常に珍しいですね。

醸造の特徴:ゆっくり、深く、テロワールへ

醸造方法にも“ゆっくり志向”が貫かれています。収穫は選果を厳格に行ったうえで畑単位で収穫し、自然酵母による低温発酵を採用。発酵容器は大樽・中樽・ステンレス・コンクリートなど多様で、畑ごとに最適な容器を選んでいます

特に注目すべきは、澱と共に12ヶ月以上熟成させる手法と、瓶詰時に微調整されたSO₂添加です。ダイスは“甘み”を糖度ではなく感覚で評価する独自スケールを持ち、収穫年ごとの味わいに合わせた繊細な調整を行っています。

例えばグラン・クリュ「アルテンベルグ・ド・ベルグハイム」「ショーネンブルグ」では、花崗岩と石灰岩を含む複雑な土壌が表現された深く緻密な味わいが得られます。

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グラン・クリュのアルテンベルグ・ド・ベルグハイムは、ある意味アルザスワインのアンチテーゼのように、13種類のブドウ品種のブレンドで作られています。それでもアルザスらしさを感じ取ることができるその味わいに驚きました。

主なワインリスト

Photo by World Wine With(筆者撮影)
代表的なゲヴュルツトラミネールとリースリングのワインボトル。

マルセル・ダイスの主なワインリストは以下のとおりです。

ワイン名タイプ特徴
コンブラントゥシオン・ブラン(Complantation Blanc)白・混植13品種ブレンド。黄桃や白花、ミネラルが調和
アルザス・ブラン(Alsace Blanc)白・混植シュロニン形式の12ヶ月瓶熟成。花と果実のバランス良好
グラン・クリュ・アルテンベルグ(Grand Cru Altenberg)白・グランクリュ混植厳選区画。白桃と鉱物感、水平な余韻
アルザス・ルージュ(Alsace Rouge)赤・ピノ・ノワール村名赤。チェリー香、穏やかなタンニン、きれいな酸
クレマン・ダルザス・ロゼ(Crémant d’Alsace Rosé)ロゼ泡ピノ主体の瓶内発酵。軽快で果実味豊かです(補足)
ヴァンダンジュ・タルディヴ(Vendange Tardive)甘口白遅摘みで糖度高い。リッチかつ正確な甘味(補足)
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ほか、通常のリースリングやゲヴュルツトラミネールなどの単一のワインも作っております。比較的求めやすい価格帯でありながら、レベルが非常に高いワインが多いと感じています。

コラム

  • 🔹 “コンプランテーション”による真のテロワール表現
     単一品種ではありません。畑ごとのバランス・個性を最も表すのは品種ではなく、畑なのです。
  • 🔹 甘味のスケール理論
     従来の残糖量表示ではなく、コクや余韻の感覚で甘味を分類し、消費者に伝わる記号として活用。
  • 🔹 グラン・クリュでの混植承認
     ジャン=ミシェルはINAO(仏原産地統制機構)を説得し、グラン・クリュ区画からも複数品種ワインを合法化させました。アルザスでは異例の快挙です。
  • 🔹 21世紀の農業革命者
     1998年からビオディナミ農法を導入し、2010年代には世界的に注目される存在となりました。自然を尊重する姿勢と品質への妥協しない姿勢が高評価につながっています。

まとめ

ドメーヌ・マルセル・ダイスは、“テロワールを語るワイン”を追求し、品種ではなく土壌と畑の個性を中心に据えた革新派生産者です。複数品種共栽培によって畑の声をワインに集約し、ビオディナミ農法によってその声を可能な限り純化しています。丁寧な選果と醸造管理から生まれるワインは、複雑でありながら明快で、料理との相性も広く、飲むたびに畑の情景が浮かぶ―そんな体験ができます。
コンプランテーション白、村名赤、グラン・クリュなど、多様なラインナップを試すことで、「アルザスの本質とは何か」を深く理解できるはずです。

KSK

アルザスで、第一畑こと、プルミエ・クリュの初めての制定に向けて、マルセル・ダイスは頑張っているとお聞きしました。
これだけの品質ならばプルミエ・クリュができる日もそう遠くはないかもしれませんね。

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この記事を書いた人

とある企業の会社員
突然ワインに目覚めて、その奥深さにハマる。
WSET Lv.3のほか、日本ソムリエ協会認定ワインエキスパート、チーズプロフェッショナル協会認定チーズプロフェッショナルも保有し、現在は、WSET Diploma(WSET ディプロマ)に挑戦中。
10カ国100箇所以上のワイン関連の自治体を巡った経験を基に、ワインの情報や勉強をもっと気軽にできるよう、世界のワインの情報を統合してお届けできるようサイトを運営していきます。

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